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成人先天性心疾患センター


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センター長ご挨拶

私たち名古屋市立大学は、長年にわたり小児先天性心疾患の診療を行ってきました。そして彼ら彼女らが成人となり、継続的な、時には新たな支援を必要とすることが少なくありません。そして心臓はもちろんこと、多岐にわたる専門家による全人的なサポートと高度な医療を提供できる医療が求められています。
そこで私たち名古屋市立大学は、成人先天性心疾患の現状に真摯に向き合い、豊富な治療経験と先進的な医療技術を活かせるように成人先天性心疾患センターを設立しました。私たちは、名古屋市や愛知県内をはじめ東海地区における成人先天性心疾患診療のリーダーとなることを目指し、さらなる努力を重ね、成人先天性心疾患患者さんの健康増進に努めてまいります。
皆さまには、ぜひ私たちのセンターをご活用いただき、お気軽にご相談いただければ幸いです。

成人先天性心疾患と成人期の移行医療についてお話します。

心臓病のこども、つまり先天性心疾患をもって生まれたお子さんたちもいつかは大人になります。先天性心疾患は出生児の約1%に存在するとされますが、近年小児期の先天性心疾患の治療成績が向上し、複雑な先天性心疾患で生まれても9割以上のこどもたちが成人を迎えることができるようになりました。これらの心臓病のこどもたちが成人した後の状態を『成人先天性心疾患』と言います。日本では現在60万人近くの成人先天性心疾患の患者さんがいるとされ、毎年1万人ずつ増えています。一方、こどもの頃に診断がつかず、高齢者になって診断される成人先天性心疾患の患者さんもおられます。
こども病院などで、小児科で診療されたお子さんが思春期を迎え成人期に一般の内科や高度に専門分化した内科で診療を受けることを『移行医療』と言います。成人先天性心疾患の患者さんたちは生まれながらの解剖やその後の修復治療の経緯、そしてその後の心機能や弁や血管などの構造の問題などが複雑に組み合わされ、患者さんが一人一人異なる問題を抱えていると言っても過言ではありません。これらの問題は一般の心臓病や成人病やその他の疾病とは異なり、経験やデータの蓄積だけでは対処できないことも多く、先進的な医学を駆使したチーム医療で『移行医療』取り組むことが必要です。

当センターが対応させていただく患者さん

① 主に小児期に診断や治療を受けた患者さん
● ファロー四徴症や両大血管右室起始症などの心内修復手術後の患者さん
● 心室中隔欠損症の治療後、または治療せずに経過観察し短絡が遺残している患者さん
● 房室中隔欠損症の治療後の患者さん
● 先天性僧帽弁狭窄症などで治療を受けた患者さん
● 先天性大動脈弁疾患でロス手術を受けた患者さん
● 完全大血管転位症手術後の患者さん
● 修正大血管転位症などの修復手術後や未修復・未治療の患者さん
● フォンタン手術を受けた、あるいは未到達の単心室症の患者さん
● 先天性心疾患に伴うチアノーゼを有する患者さん
● 先天性心疾患の治療後に側副血行路や肺動静脈瘻で治療を繰り返している患者さん
● 先天性心疾患の治療後に不整脈をきたしペースメーカー受けこみを行われた患者さん
● 小児期に川崎病を患った患者さん(冠動脈瘤や狭窄があることがあります)。
● 冠動脈起始異常で治療を受けた、ないし未治療の患者さん。
● 先天性または遺伝性の心筋疾患、血管疾患(拡張型心筋症、閉塞性肥大型心筋症、マルファン症候群など)の患者さん。


②成人期になって初めて先天性心疾患と診断された患者さん
● 未治療の心房中隔欠損症、心房性不整脈や肺高血圧症や心臓弁膜症を伴うこともあります。
● 未治療の心室中隔欠損症、肺高血圧症や心臓弁膜症を伴うこともあります。
● 未治療の房室中隔欠損症、肺高血圧症や心臓弁膜症を伴うこともあります。
● 未治療の動脈管開存症、肺高血圧症などを伴うこともあります。
● 未治療の部分肺静脈還流異常症、肺高血圧症や心臓弁膜症を伴うこともあります。
● エプスタイン病、右心不全などを伴うことがあります。
● ウール病等の心筋疾患、心不全を伴うことがあります。
● 未治療の大動脈弓縮窄症、脳動脈瘤や左室肥大などを伴うことがあります。
● 先天性または遺伝性の心筋疾患、血管疾患(拡張型心筋症、閉塞性肥大型心筋症、マルファン症候群など)の患者さん。

多彩なメンバーによるチーム医療で皆さんをサポートします

当院では小児科・循環器内科・心臓血管外科を中心として成人先天性心疾患の専門の診療チームを組み診療にあたっています。当院では小児先天性心疾患の診療を古くから行っている大学病院であり、心不全、不整脈、カテーテル治療、画像診断など循環器疾患の診断と治療には多彩な専門家をそろえ、また小児先天性心疾患手術から高齢者心臓血管疾患の外科手術まで幅広い手術に対応しています。
一方、患者さんの多くは普通に社会生活を送られており、就労や就学に不安を抱えていたり、妊娠出産などに問題を抱えていたりすることがあります。このため、成人先天性心疾患患者の妊娠出産に対応できることや、臨床心理士などの心理分野の資格保有者がメンタルケアを行える必要があります。また、高度な放射線画像診断、高難度手術麻酔への対応も必要となります。さらにフォンタン循環をはじめ右心不全により肝臓病を発症することが知られるようになり、消化器内科との連携も重要です。私たちはこれらの悩みや問題に対応できるメンバーでチーム医療を実践し、一人一人が安全で安心して暮らせるようにサポートしています。
また、当院のかかりつけの患者さんだけでなく、特にこども医療センターから成人期への移行期を中心に他院や他都道府県で診断や治療を受けた患者さんたちを積極的に受け入れ、また他医療機関との連携を当院は大切にしています。

組織

センター長
循環器内科 部長 瀬尾 由広

副センター長

心臓血管外科 板谷 慶一

小児科 鈴木 一孝

構成メンバー

循環器内科 菊池 祥平、山邊 小百合
心臓血管外科 須田 久雄
小児科 篠原 務
産婦人科 大谷 綾乃
麻酔科 加古 英介
放射線科 中川 基生
精神科/臨床心理室 伊藤 嘉規
消化器・肝膵内科 藤原 圭
外来担当医
月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
午前 菊池 祥平
(循環器内科)
篠原 務
(小児科)
鈴木 一孝
(小児科)
瀬尾 由広
(循環器内科)
山邊 小百合
(循環器内科)
板谷 慶一
(心臓血管外科)
篠原 務
(小児科)
午後 菊池 祥平
(循環器内科)
瀬尾 由広
(循環器内科)
山邊 小百合
(循環器内科)
板谷 慶一
(心臓血管外科)

先天性心疾患の再手術について解説します

成人先天性心疾患では小児期に修復した心臓弁や血管に再治療が必要になったり、成長とともに不整脈や心不全を併発し、その治療が必要になったりします。これらの手術治療においては何度目かの再開胸手術となり、特に難易度やリスクの高い手術とされています。
これらの手術加療においては生命の危機にあるような緊急の患者さんだけではなく、日常生活の中で疲れやすさや動悸を自覚する患者さんたちの中でも必要とすることは稀ではありません。特に成人先天性心疾患の患者さんたちの中には学校や仕事に通い社会生活を営んでいる方も少なくなく、就労や運動、妊娠出産にともなう心負荷に耐えられるように適切な時期に手術を受けることは大切なことです。
しかしながら、このような成人期先天性心疾患での外科手術は内容が極めて高度であるために日本を含む先進国の中でもこのような手術治療を行っている病院は決して多くはないのが実情です。当院ではチーム医療や先進的な医学研究の結果を駆使し、手術リスクを考えた上で十分な検討をもとにして治療を計画しています。そして先天性心疾患の再手術に豊富な経験を有する外科チームにより手術治療を行なっています。
当院では下記のような先進的な手術に取り組んでいます。

◇ ファロー四徴症類縁疾患などの右心不全を伴う肺動脈弁置換。肺動脈弁置換手術と僧帽弁や三尖弁形成、不整脈手術との同時手術。
◇ ファロー四徴症類縁疾患、肺動脈閉鎖での右室流出路弁付き人工血管を用いた修復(ラステリ手術)後の再手術。
◇ フォンタン手術後の血行動態の破綻や不整脈に対する再手術。
◇ 完全大血管転位症手術後の肺動脈や大動脈基部の再手術。
◇ 体心室右心不全に伴う両心室ペーシングや房室弁逆流に対する手術。
◇ 房室中隔欠損術後などの複雑な解剖の房室弁に対する形成手術や弁置換手術。
◇ エプスタイン奇形などの三尖弁疾患に対する弁形成や弁置換手術。
◇ 肺高血圧や心臓弁膜症を伴う短絡疾患(心房中隔欠損、心室中隔欠損、房室中隔欠損、肺静脈還流異常症など)における内服治療と複合手術加療やカテーテル治療を組み合わせた集学的治療。
◇ 動脈管開存症や大動脈縮窄症における大動脈弓手術。
◇ 先天性心疾患修復手術後の大動脈基部拡大(ロス手術後、大血管転位症手術後、ファロー四徴症など)に対する大動脈基部再置換手術(自己弁温存や大動脈弁置換手術)
◇ 先天性冠動脈疾患に対する冠動脈修復手術や冠動脈バイパス手術。

ハートチームによるハイブリッド治療について解説します

成人先天性心疾患では成人になって不整脈や心臓弁膜症や肺高血圧症を合併することも稀ではなく、強い息切れや動悸症状のため、日常生活に支障をきたすこともあります。適切な治療により苦しみから解放され楽しく過ごすことのできる患者さんも多々おられますが、一般の不整脈や心臓弁膜症などとは異なり、血行動態が複雑であるために安全に治療を行うために様々な配慮や工夫が必要となります。
私たちは循環器内科、小児科、心臓血管外科の専門家からなるチームをもとに、心臓手術以外にもカテーテル治療や不整脈アブレーション、内服治療など様々な診断や治療の手段を揃え、これらの治療の組み合わせ(ハイブリッド)による個々の患者さんの生活に合わせたベストな診療を提供することを目指しています。

◇ 先天性心疾患に伴う未治療肺高血圧症に対する肺高血圧治療。
◇ 成人期動脈管開存症、大動脈瘤に対するステントグラフト治療。
◇ 不整脈に対するカテーテルマッピンングやアブレーション治療。
◇ 成人期未閉鎖短絡疾患に伴う肺高血圧症に対するTreat & Repair治療(内服治療と手術治療との併用療法)。

新たな医療を目指して、臨床研究を行っています

成人先天性心疾患では現代においても経験やデータの蓄積は十分ではありません。このため、まだ解明されていないことがたくさんあります。私たちは心臓の機能や、特殊な血の流れを手に取るようにわかる4D イメージングを駆使した研究を行っています。この先進的な画像診断や血行動態解析の研究結果をもとに、一人一人の患者さんの心臓の問題点を包括的にアセスメントし、入念な治療のプランニングが行えるようになってきました。
私たち名古屋市立大学はこのような研究成果を世界に向けて発信し、新たな診断法や治療法の構築を目指しています。この分野で世界をリードし、大学間や病院間での連携や経験の共有と交流を大切にして、私たちの研究成果を多くの患者さんに届けられるよう日々考え、努力を続けていきます。

先進的な画像解析技術

成人先天性心臓外科フェローシップ募集

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