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副腎腫瘍センター(ATC)


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1.センター長ご挨拶

 このたび名市大病院では、“かくれたコモンディジーズ”、副腎腫瘍の診断と治療に取り組む目的で、副腎腫瘍センターを設立しました。
 同センターでは、内分泌・糖尿病内科、放射線診断・IVR科、循環器内科、腎臓内科、泌尿器科、麻酔科、病理診断部、看護部などが部門横断的に力を合わせて取組むことで副腎腫瘍の正確かつタイムリーな診断と、最先端の治療を提供いたします。
 副腎腫瘍は、高血圧、糖尿病、肥満症、電解質異常などのありふれた病気の背後に潜んでいることがあります。また、CT検査や腹部エコー検査などの画像検査で偶発的に見つかることも多い腫瘍です。
 このようなケースでは診断が先送りとなり、治療の要否について結論が出ないままに時間が経ってしまうこともあります。診療科、部門が連携することで迅速に診断、治療をおこなうことが可能になります。
 副腎腫瘍は診断確定や治療方針の決定に専門的な判断が必要な疾患です。画像検査で直径3cm以上の腫瘍が見つかった場合、新規発症の高血圧や難治性の高血圧、肥満を伴う治療困難な糖尿病、低カリウム血症が持続する場合など、是非お気軽に当センター(窓口は、内分泌・糖尿病内科、循環器内科、腎臓内科)に受診ください。

2.副腎とは

副腎は、左右の腎臓の上にそれぞれ1つずつある各3~5gの小さな臓器で、われわれが生きてゆくために必要なさまざまなホルモンを作り血液中に分泌しています。皮質と呼ばれる副腎の表面の部分からは、アルドステロン、コルチゾール、アンドロゲン、表面から遠い髄質からは、アドレナリンやノルアドレナリンと呼ばれるホルモンが分泌されています。副腎が作るホルモンは、ヒトが命をつなぐために必要不可欠であることから、副腎が働かなくなるとわれわれは治療無しに生きてゆくことができなくなります。

CTにおける左副腎腫瘍の横断画像(左)および縦断画像(右)


3.副腎腫瘍とは

副腎腫瘍は副腎から生じる腫瘍の総称です。皮質からも髄質からも腫瘍が出来ることがあり、皮質から生じる腫瘍には良性の副腎皮質腺腫と悪性の副腎ガンがありますが、髄質から生じる褐色細胞腫は全て悪性として扱います。また肺ガンなど他の臓器のガンが副腎に転移してできることもあります。良悪性とともに、副腎腫瘍の場合には、ホルモンを産生するかしないか、が重要です。ホルモンを産生する副腎腫瘍では、ホルモンの過剰によって、2次的に高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、脳卒中、肥満症などの病気が起こることがあるからです。逆に、高血圧や糖尿病で治療中の方で、よくよく調べると実は原因が副腎腫瘍だった、と後に分かることもあります。ですから難治性の高血圧や糖尿病、肥満症では、一度は必ず副腎腫瘍を疑ってみることが重要です。

たとえば、高血圧があり、かつ、次の項目のうち1つ以上を満たされている場合には、特に副腎腫瘍の可能性が高く、検査を受けて頂くことをお勧めします。

高血圧に加えて
① 血液検査でのカリウム低値(低カリウム血症)
② 降圧薬を複数飲んでもなかなか血圧が下がらない(治療抵抗性)
③ 40歳未満での高血圧の発症
④ 上の血圧(収縮期血圧)150mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)100mmHg以上
⑤ すでに副腎腫瘍が見つかっている場合
⑥ 若年での脳卒中の発症歴
⑦ 睡眠時無呼吸症候群を合併している場合

過剰に作られるホルモンの種類によって病態や症状は異なります。代表的なものとして、アルドステロンが作られる原発性アルドステロン症、コルチゾールが産生されるクッシング症候群、アドレナリン過剰となる褐色細胞腫があります。最近では、健康診断やほかの病気の検査などで副腎腫瘍が偶然見つかることが多くなりました。この場合も、ホルモンを作っているかを必ず調べる必要があります。

4.副腎腫瘍が疑われたら

副腎腫瘍は、健康診断や他の病気の検査で偶然発見される場合(これを副腎偶発腫と呼びます)と、高血圧や糖尿病、肥満症の原因としてのホルモン過剰の有無の検査で見つかる場合があります。
副腎腫瘍が疑われたら、まずCTやMRIなどの画像検査で腫瘍の形や大きさを調べ、良性か悪性かを見極めていきます。また、腫瘍がホルモンを過剰に分泌しているかどうか、ホルモンの血液中や尿中の濃度を測るための血液・尿検査を行います。ホルモン測定の場合には、ベッドの上で30分以上寝て頂いた上で、寝たまま採血を行うこともあります。これを安静採血と呼びます。特に高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満症、低カリウム血症などの病気や病態をお持ちの方では、副腎腫瘍がホルモンを過剰に作っている可能性が疑われることから、精密なホルモン検査が必要です。もしまだこれらの病気を発症されていなくても、副腎のホルモンバランスが乱れていると、将来これらの病気が起こってくる可能性もあります。ですから自覚症状がなくても検査を行う必要があります。

負荷試験の流れ(イメージ図) ※

初回採血時に血管内にプラスチックの針を留置してテープ等で固定し、2回目以降は新たには針を刺さずに留置した針から採血が出来る場合もありますが、状況によって毎回針を穿刺させて頂く可能性もあります。

※患者さんごとに行う負荷試験は異なり、採血のタイミングや回数、使用するクスリや注射、点滴などは上記イメージとは異なる場合があります。

5.副腎腫瘍の診断

血液・尿検査によってホルモンの過剰が疑われる場合には、腫瘍によるホルモンの産生が生理的歯止めが効かない頑固なものかどうかを調べるために、検査用のクスリを飲んで頂いたり、注射ないし点滴させて頂いた後のホルモンの血中濃度を測る、負荷試験という特殊な検査を行い、ホルモン産生副腎腫瘍の確定診断を行います。どういった種類の負荷試験を行うのか、何種類の負荷試験を行う必要があるのか、どのような結果をもって確定診断を下すのか、については、患者さんの病状や事前の結果次第で異なります。場合によって、負荷試験などの精密検査を行うための検査入院が必要な場合もあります。

精密検査により、ホルモンを作る副腎腫瘍(機能性副腎腫瘍と呼びます)が存在することが確定した場合(存在診断)には、さらに、左右のどちらの副腎(あるいは副腎の外)からホルモンが過剰に分泌されているのかを調べるための検査を行い、ホルモン過剰産生の場所を特定する(局在診断)必要があります。これは、両側の副腎に腫瘍がある場合はもちろんですが、片側のみの場合でも、CT検査などで腫瘍が見えている側とは反対側の副腎や副腎以外の神経節などからホルモンが過剰に作られている場合があり得るからです。この可能性に関する検査をおろそかにすると、手術でホルモンを作っていない側の副腎を取ってしまう危険があることから、局在診断は極めて重要です。局在診断のための検査としては、副腎静脈サンプリングと呼ばれる、入院して頂いて行うカテーテル検査や、シンチグラフィと呼ばれる放射性同位元素(アイソトープ)を注射する特殊な画像検査などがあります。

副腎静脈サンプリングのためのカテーテル検査の血管模式図(左)と検査時のX線写真(右)

腹部CT検査で腫瘍を認める(左:赤丸)部分にシンチグラフィー(右)では検査用試薬の取り込みが認められ、ホルモンを産生していることが分かる

6.副腎腫瘍の治療

副腎腫瘍の種類や大きさ、ホルモン過剰産生の有無などにより治療法は異なりますが、多くの副腎腫瘍においては、クスリによる治療よりも手術による切除がすすめられます。

①原発性アルドステロン症(アルドステロン過剰)
手術切除がすすめられます。手術を希望されない場合、左右両方の副腎に異常がある場合や手術がどうしてもできない事情がある場合などには、アルドステロンの働きを妨げる薬(アルドステロン受容体拮抗薬)での治療を行います。最近では、CT検査を行いながら体外から針を刺して腫瘍をラジオ波により焼く治療(ラジオ波焼灼術)が検討される場合がありますが、現状で厳しい条件を満たす場合のみに実施可能で、対象となる場合は多くはありません。

②副腎性クッシング症候群(コルチゾール過剰)
手術切除が最もすすめられます。手術が困難な場合、手術施行まで時間がかかってしまう場合などには、過剰なコルチゾール産生によって全身状態が悪化してしまうのを防ぐ目的で、メチラポンなどコルチゾールの産生を妨げる薬(副腎皮質ホルモン合成阻害薬)を用いることがあります。切除後は急にコルチゾールが減ることにより体調不良となる可能性があるため、コルチゾールが体内で作れるようになるまで(時には年の単位で)、コルチゾールを補うためのホルモン剤を飲んでいただく必要があります。

③副腎癌
手術切除が最もすすめられます。転移がある場合、手術が困難な場合では、ミトタンやオシロドロスタットと呼ばれる薬を用いることがあります。

④褐色細胞腫(カテコラミン過剰)
手術切除が最もすすめられます。カテコラミンの働きを妨げる薬(α遮断薬、β遮断薬)を用いることがあります。

⑤非機能性副腎腫瘍(ホルモンの異常がない)
サイズが大きい場合や、経過観察の間に徐々にサイズが大きくなってゆく場合には、手術の対象となりますが、逆に小さくかつサイズが余り変わらない場合には、手術の対象とはならず、経過観察となります。

⑥転移性副腎腫瘍
もともとのガンの治療状況によりますが、手術による切除がすすめられる場合がしばしばです。

ロボットを使った手術の模式図(左)と手術中の腹腔内の様子(右)

摘出した腫瘍(左)とホルマリン固定後の腫瘍の断面(右)


7.名市大病院の副腎腫瘍センターとは

当センターの特徴

副腎腫瘍は、
①ありふれた生活習慣病の背後に潜む意外と多い病気です。
②診断や治療には豊富な診療経験や高い専門性が必要です。
③診断にも治療にも診療科や部門の垣根をこえた密接な協力体制が必要です。

名古屋市立大学病院 副腎腫瘍センターはこうしたニーズに応えるべく、内分泌・糖尿病内科、循環器内科、腎臓内科、放射線診断・IVR科、泌尿器科、麻酔科、病理診断部、看護部、管理課、医事課からなるチームとして2023年1月に設立されました。副腎腫瘍の診療に焦点を絞った、国内外にも例の少ないセンターです。経験豊富で専門的な知識を有するスタッフ間で密な連携を行い、最先端の医療技術と研究成果を駆使して、正確な診断、最適な治療法をご提案いたします。


8.各部門からのメッセージ

内分泌・糖尿病内科

高血圧や糖尿病、肥満症などのありふれた生活習慣病の背後に隠れた副腎ホルモンの異常や副腎腫瘍は意外と多い可能性が指摘されています。見逃されている腫瘍をいち早く発見し、速やかに的確かつ精密な診断を下し、内科医として安心・安全な治療をサポートする、いずれの段階においても、ホルモンの専門家としてのわれわれの力を発揮します。また患者様に安心して治療に望んで頂けるよう、コミュニケーションを大切にして、疑問や不安に真摯に向き合っていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

循環器内科

我が国では高血圧患者は4300万人存在しており、実に3人に1人が罹患している生活習慣病になります。その殆どが本態性高血圧ですが、10%ほどは、ある特定の疾患が背景にある二次性高血圧になります。その中でも原発性アルドステロン症や褐色細胞腫等に代表される副腎腫瘍性の二次性高血圧の割合は多く、「かくれたコモンディジーズ」と言えます。私たちは、高血圧を主訴に受診された方や、コントロール不良の高血圧でご紹介頂いた方から、二次性高血圧を鑑別し副腎腫瘍をいち早く発見し、副腎腫瘍センターで協力して診断、治療へと結び付けていきます。患者さんに安心して検査、治療を受けて頂けるよう誠意を持って診療に取り組んでおりますので、何卒宜しくお願い致します。

腎臓内科

副腎腫瘍によって起こることが多い原発性アルドステロン症は、治療可能な二次性高血圧であり、本態性高血圧よりも慢性腎臓病の発症リスクが高いことが知られています。また、手術で副腎摘出を行うと、内服治療を継続するより腎予後がよい可能性があります。そのため早期発見、早期治療が重要です。当センターでは複数科の医師が、的確な診断を行えるよう体制を整えています。高血圧でお困りの際は、ぜひご相談ください。

放射線診断・IVR科

放射線診断およびIVR専門医が担当します。CTやMRIを用いた画像診断により、偶然見つかる副腎腫瘍の検出や副腎腫瘍を含めた全身の臓器の画像診断を行っています。また副腎腺腫の診断の鍵となる静脈サンプリングは細い血管の同定およびその選択が必要なため、高度な技術が必要ですが、当院では熟練した医師が担当することにより、高い成功率をおさめています。患者さん方に安心して当院で検査を受けていただけるよう日々努力しておりますので何卒宜しくお願い致します。

泌尿器科

泌尿器専門医・ロボット手術執刀資格医が担当します。ホルモンを産生する腫瘍や、腫瘍のサイズが大きい腫瘍を手術により摘出します。2023年よりロボット支援下手術が適応となり、より患者さんのからだに低侵襲な手術が可能となり、手術中の出血量の減少や合併症の低下などにより、入院期間も短くなってきています。ロボット支援手術は高度な技術が必要ですが、当院ではロボット支援手術を習熟した経験豊富な医師が担当することで、より安全な手術が可能となっています。患者さん方に安心して当院で手術を受けていただけるよう心がけておりますので、何卒宜しくお願い致します。

麻酔科

褐色細胞腫などの副腎腫瘍の手術では、手術中の非常に高難度な麻酔管理と手術後に集中治療室で厳密な集中治療が必要となる場合があります。麻酔科には、多くの麻酔科専門医と集中治療科専門医が所属しており、安心して手術を受けて頂くことができます。

病理診断部

摘出された副腎は、固定処理後に、パラフィン・ブロック化され、顕微鏡観察用標本が作製されます。それらの標本の病理組織診断は、病理専門医が行います。組織診断は国内基準の「腫瘍取り扱い規約」や国際基準の「WHO腫瘍組織分類」に基づいて行われています。パラフィン・ブロックや顕微鏡観察用標本は、個人情報保護のもと、安全且つ厳重に保管され、追加検査が必要となった場合には使用されます。病理検査情報が患者さんに速やかに還元されますよう努力して参りますので宜しくお願い申し上げます。

9.よくあるご質問

Q. 副腎腫瘍は、どういうきっかけで見つかることが多いのでしょうか?
A. 健康診断や他の病気の検査(腹部超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査等)などで偶然見つかることも多く、副腎偶発腫と呼ばれます。また高血圧、糖尿病、肥満症などで治療中の方で、これらの原因を調べた結果、副腎腫瘍が見つかることもあります。

Q. 副腎腫瘍の発生原因について教えてください
A. 副腎腫瘍の発生原因はほとんど分かっていませんが、褐色細胞腫の一部は遺伝子の異常で発生することが知られており、この場合は甲状腺や副甲状腺など他の臓器にも腫瘍が出来る可能性があり注意が必要です。

Q. 全ての副腎腫瘍が治療の対象になるのでしょうか。
A. 画像検査の結果、悪性の可能性が低いと考えられ、かつ、ホルモンを産生しない非機能性腫瘍は原則として治療の適応にはなりませんが、定期的な検査による経過観察が必要となる場合があります。

Q. 疲れやすいのは副腎疲労症候群のせいでしょうか?
A. 医学的には「副腎疲労症候群」という疾患はありません。しかし副腎皮質が産生するコルチゾールというステロイドホルモンが不足する「副腎不全」であれば易疲労感は重要な自覚症状になります。診断のためには負荷試験という特殊な採血検査が必要になります。

Q. 高血圧で治療を行っているのですが、副腎に腫瘍があると言われました。副腎腫瘍が原因で血圧が高くなっている可能性はあるのでしょうか?
A. 高血圧患者さんの中で原発性アルドステロン症が原因と考えられる割合は5%程度と考えられています。そのため、副腎腫瘍が原因で血圧が高くなっている可能性がありますので精密検査を受けて頂くことをお勧めします。腫瘍からのホルモン産生によって血圧が高くなっている場合は、腫瘍の治療によって血圧が改善する可能性もあります。

Q. 糖尿病や高血圧、肥満の原因が副腎腫瘍だと言われました。手術で腫瘍を切除したら、これらの薬は必要なくなりますか。
A. 副腎腫瘍の一部のものは、糖尿病や高血圧、肥満症の原因となります。そのため、副腎腫瘍を切除することで、糖尿病治療薬や降圧薬が不要となる可能性はある程度はあります。一方で、糖尿病や高血圧、肥満症の原因は、副腎腫瘍以外にも体質や生活習慣、年齢の影響などもあり、副腎腫瘍のみが原因でないこともしばしばあります。そのため、副腎腫瘍を治療したとしても、薬が引き続き必要な可能性もあります。薬が止められるかどうかは、多くの場合、治療をしてみなければ分からず、事前に予測することは困難です。

Q. 副腎腫瘍は癌ですか。
A. 副腎腫瘍の多くは良性のものであり、悪性腫瘍(癌)は比較的稀です。副腎は身体の奥深くにある臓器であることから、腫瘍内に癌細胞が存在しているかどうかを直接確認することは簡単ではありません。そのため、今の時点では治療の必要がないと判断されたとしても、定期的に検査を行って、副腎腫瘍のサイズや形に変化がないかどうか、経過をみていくことが必要となります。

10.副腎腫瘍センターへのご受診・ご紹介のご案内

内分泌・糖尿病内科 初診外来 月曜日~金曜日
初診受付時間 8時30分~11時00分


※かかりつけ医療機関から当院の初診外来予約をご取得頂き、ご紹介状をご持参の上ご来院ください。当院の外来予約は、かかりつけ医療機関より当院地域医療連携センターを通して取得頂けます。
(難治性高血圧症や低カリウム血症などでは、循環器内科や腎臓内科にご紹介頂いても構いませんが、迷われる場合は内分泌・糖尿病内科にご紹介ください。)