漢方医学センター
センター長からのご挨拶
令和2年3月1日より漢方医学センターが開設されました。西洋医学を担う大学病院ではゲノム治療や急速に進化する抗癌剤治療が中心であります。しかしご存知の通り未だに完全に治癒させることができる疾病は稀であり治療効果と共に多彩で強い副作用も深刻な問題となっています。漢方とは古来中国で発生後日本や中国で発展を遂げてきた医学です。独特の伝統的思考過程にて診断、治療をしますが時に西洋医学で効果不十分な時に効果を発揮することも多いです。日本ではほとんどの開業医で採用している漢方ですが大学病院で導入することにより、よりきめ細かな治療と大学病院特有の漢方診療を提供いたします。既存の治療で中々治療効果が出ない時、現在の西洋医学の範疇では治療法が十分に確立されておらずお困りの時はお気軽にご相談ください。
センターの取り組み
1. 各診療科と連携した漢方外来の実施
2. 学生および研修医等の若手医師の教育・人材育成
3. 薬草園を有する薬学研究科をはじめとする各研究科との連携による研究推進
2. 学生および研修医等の若手医師の教育・人材育成
3. 薬草園を有する薬学研究科をはじめとする各研究科との連携による研究推進
センターの特徴
漢方医学センターの役割は西洋医学では対応しきれない症状、病状の緩和改善を漢方薬の併用にて改善していくことにあります。現在、センターでは総合漢方外来・内科(主に消化器)、外科、泌尿器科、いたみセンターが外来担当しております。
総合漢方外来 | 消化器を中心に幅広く色々な症状、病態に対応いたします。 現在まで治療した疾患は消化器不定愁訴、頭痛、めまい、難聴、味覚障害、手足のしびれ等。 当外来の最大の特徴である抗癌剤の副作用軽減のための漢方では肝がん、膵がん、肺がん、胃がん等の抗がん剤による食欲低下、蛋白尿、しゃっくり、出血、手足のしびれ等に対する治療実績があります。その他肝硬変、肝臓癌、脂肪肝に対する漢方治療も多症例経験しております。 もう一つの特徴として生薬★(煎じ薬)を使用した本格的な中国医学を導入した治療も選択できます。個人のその時点での状態に合った治療薬を組み立てて処方することが可能であり量や種類も自在に変化させることができます(下記)。 |
外科 | 消化器を中心とした手術後の様々な症状に対し、漢方治療をとりいれております。手術後に体力が回復しない方、上腹部の手術後の膨満感、大腸術後の便秘症など、お困りの方は一度、ご相談ください。そのほか、こむら返り(足がつる)などの症状にも漢方が効くことがあります。 |
泌尿器科 | 泌尿器科で、漢方治療を優先する疾患として骨盤内の血流うっ滞に起因する骨盤痛症候群や前立腺炎様症候群があります。また、漢方治療を積極的に試みてよい疾患として、前立腺肥大症、男性不妊症、後腹膜線維症、形成性陰茎硬化症などがあります。さらに、尿失禁や慢性尿路感染症にも西洋薬と併用して補助的に使用しています。 |
いたみセンター | 当センターでは、急性痛から慢性痛の幅広い患者を診療しております。急性痛では、薬物療法や神経ブロック療法を中心に行いますが、副作用により内服薬が使用できない方や従来の治療では効果が不十分な方にも漢方薬で疼痛軽減を認めることがあります。一方、慢性痛は、痛みの病態に心理社会的要因も関わる複雑な痛みです。心理・身体面の両方に作用する漢方薬の特徴を生かし、慢性痛緩和の治療選択肢として、当センターでも積極的に使用しております。漢方でのいたみ治療をご希望される方は、いたみセンターまでご相談ください。 |
生薬とは
漢方薬はエキス剤(出来上がっているもの)と構成成分の生薬(植物の葉、茎、根、動物、虫類、鉱物)を組み合わせて煮だして飲む方法があります。両方とも保険適応で処方することができます。エキス剤は粉末や丸薬になっているので携帯するのに便利で使いやすいです。生薬は個人の状態にあったオーダーメイドの処方が可能ですが毎日自分で煎じる必要がある煩雑さがあります。
当センターへの受診について
総合漢方外来(内科)としては毎週金曜日にその他の科は火曜日に開設していますので、かかりつけの医師に相談し紹介状でご依頼頂くこととなります。すでに名市大病院に通院中の方は担当医にご相談ください。紹介先の科を迷う場合は総合漢方外来(内科)へご紹介ください。
スタッフ紹介
(令和5年12月1日現在)
役職 | 氏名 |
センター長・教授 | 野尻 俊輔 |
副センター長・教授 | 松尾 洋一 |
副センター長・特任教授 | 木村 和哲 |
教授 | 戸澤 啓一 |
教授 | 杉浦 健之 |
教授 | 日比 陽子 |
助教 | 有馬 菜千枝 |
助教 | 加藤 利奈 |
漢方とは
a. 漢方と西洋医学
厳密にいうと漢方とは日本古来からの伝統的に独自に発展した医学です。それに対し中国本来の伝統医学を中医学といいます。両方合わせて東洋医学と言うことがあります。これらは日本の病院のほとんどが採用している西洋医学とは色々な面で性格が違います。
b. 東洋医学の診察法の特徴
まず、臓器の考え方が違います。
西洋医学は臓器をそのまま物質と機能の両面から科学的にとらえますが東洋医学は時として感覚的なものとしてとらえることがあります。
東洋医学の診察は気・血・津液(水)という独特の概念を持ちそのバランスを保つことを大切にする考え方です。四診という方法を使って病態を考え治療法を決めていきます。
西洋医学は臓器をそのまま物質と機能の両面から科学的にとらえますが東洋医学は時として感覚的なものとしてとらえることがあります。
東洋医学の診察は気・血・津液(水)という独特の概念を持ちそのバランスを保つことを大切にする考え方です。四診という方法を使って病態を考え治療法を決めていきます。
従って西洋医学とは病気のとらえ方が違います。基本的には漢方薬は西洋医学薬と併用できますが一部作用の増強や効果減弱等もあり得ますので詳細は主治医、漢方処方医までお尋ねください。
c. 漢方薬の種類と飲み方
煎じ薬は一日分の生薬が袋詰めになって渡されます。これを自宅で500-800mL位の水で煮だして何回かに分けて飲みます。
エキス剤は一回ずつパックになった粉末製剤を基本食前に水またはお湯で内服するのが一般的です。
エキス剤は一回ずつパックになった粉末製剤を基本食前に水またはお湯で内服するのが一般的です。
d. 漢方薬の副作用
よく漢方は即効性がない代わりに副作用がないといわれますが実際は即効性があるものもたくさんあり副作用もそれなりにあります。
有名なものとしては甘草による偽アルドステロン症があります。甘草は日本で採用されている漢方処方に含まれている頻度が高いので注意する必要があります。特に肝臓の治療でグリチルリチン製剤を使っている人は同様の作用があるため特に注意が必要であります。
主成分のグリチルリチンによる酵素阻害で浮腫、血圧上昇、低カリウム血症、高ナトリウム血症、横紋筋融解症等が現れることがあります。放置して重症になると命にもかかわることがあるので注意が必要です。
その他頻度はあまり高くありませんが間質性肺炎があげられます。間質性肺炎自体は要因もなく突発的に発症する可能性があり、また西洋薬でも起こりえます。現在どの漢方薬が起こしやすいという結論は出ておらず、どの薬剤でも起こし得るものであり息切れ等の症状が起こってきた場合は、早めに検査をして対処を講じる必要があります。
さらに、アレルギー体質の人、特に食物アレルギー等ある人は漢方薬にその食材(例えば柑橘系、小麦、いも類等)が使用されていることがありますので十分注意が必要です。
有名なものとしては甘草による偽アルドステロン症があります。甘草は日本で採用されている漢方処方に含まれている頻度が高いので注意する必要があります。特に肝臓の治療でグリチルリチン製剤を使っている人は同様の作用があるため特に注意が必要であります。
主成分のグリチルリチンによる酵素阻害で浮腫、血圧上昇、低カリウム血症、高ナトリウム血症、横紋筋融解症等が現れることがあります。放置して重症になると命にもかかわることがあるので注意が必要です。
その他頻度はあまり高くありませんが間質性肺炎があげられます。間質性肺炎自体は要因もなく突発的に発症する可能性があり、また西洋薬でも起こりえます。現在どの漢方薬が起こしやすいという結論は出ておらず、どの薬剤でも起こし得るものであり息切れ等の症状が起こってきた場合は、早めに検査をして対処を講じる必要があります。
さらに、アレルギー体質の人、特に食物アレルギー等ある人は漢方薬にその食材(例えば柑橘系、小麦、いも類等)が使用されていることがありますので十分注意が必要です。