グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


高精度放射線治療センター


ホーム > 診療科・中央部門紹介 > 中央部門 > 高精度放射線治療センター

センター長あいさつ

樋渡 昭雄

名古屋市立大学病院では、病巣部に正確に放射線を集中し正常臓器の被ばくを少なく抑えた高精度放射線治療を、2004年より施行して来ました。その後件数を重ねていき、成果を多くの学術論文として公表できるようになりました。それらの経験の積み重ねに加えて、放射線治療装置と関連機器を新規のものに一新することができましたので、2018年より名市大病院放射線治療部門を「高精度放射線治療センター」として組織し、さらなる充実を図っていくこととしました。装置やスタッフについては以下にお示しする通りですが、国内のみならず世界的に見てもハイレベルの放射線治療が提供できる陣容と自負しております。放射線治療の進歩によって、様々ながんが手術なしで完治できるようになってきていますが、がん治療において放射線治療が用いられる割合が、欧米に比べて著しく低いのが日本の現状です。がんや他の腫瘍で悩まれる患者様におかれましては、是非一度受診されて放射線治療専門医のお話を聞くようにお勧めします。放射線治療を受けられる方々には、よりよい治療が提供できるようにスタッフ一同取り組んでいきたいと思います。

放射線治療について

放射線治療は、正常臓器の形態・機能を維持しつつ、がんの治癒を目指す、「切らずに治す」がん治療です。放射線治療は、手術、化学療法と並んで、がん治療における3本柱の重要な1つの治療法です。今、がんに放射線を集中させる高精度放射線治療技術の登場により、放射線治療の精度が急速に向上しています。

高精度放射線治療センターについて

高精度放射線治療とは、癌に集中した照射を行うことで治療成績の向上や副作用軽減を目的とした治療技術です。強度変調放射線治療 (IMRT)や定位放射線治療と呼ばれる治療法があります。このような治療を提供するには高精度な放射線治療装置を有し、その装置を安全に操作・管理するスタッフが必要です。2018年に開設した高精度放射線治療センターは、最新の放射線治療機と豊富な治療実績をもち、放射線治療専門医、医学物理士、放射線治療専門放射線技師、放射線治療品質管理士、看護師による充実した診療体制により、安全で質の高い放射線治療を提供しています。

放射線治療システム

高精度放射線治療に特化した装置を積極的に導入しています。特に2017年より稼動したトモセラピーの最新バージョンの高精度放射線治療装置Radixact(ラディザクト)は強度変調放射線治療専用の装置であり、アジアで初導入され豊富な治療実績があります。TrueBeam(トゥル-ビーム)、Radixact(ラディザクト)、Tomotherapy(トモセラピー)を各1台、合計3台有し、これらの高精度放射線治療装置を活用することで、全治療件数における高精度治療の比率は6割を占めており、国内トップクラスです。Radixactには動体追尾照射可能なSynchrony(シンクロニー)や最高品質の画像誘導放射線治療(IGRT)が可能なClearRTが搭載されています。放射線治療計画は日本初導入のRayStationで行っています。これらの最新の高精度治療装置も用いて、それぞれの腫瘍に合わせた最適な治療を実施しています。

代表歴な高精度放射線治療

1. 定位放射線治療
がんに放射線を集中できる、いわゆるピンポイント照射です。1回大線量で小数回の治療を行い、大きな効果を上げています。治療の負担が少なく、通院でも可能です。また最近では後述する動体追尾照射が可能となり、最小限の照射範囲により副作用のリスクがさらに低下しています。
(主な対象疾患) 転移性脳腫瘍 早期肺癌 転移性肺腫瘍 肝臓癌 転移性肝腫瘍   
          前立腺癌 転移性骨腫瘍(椎体) オリゴ転移(少数個の転移)
(具体例①)早期肺癌に対する定位放射線治療(図1)。定位放射線治療により、癌の制御率が向上し、副作用のリスクは最小限となります。早期肺癌では、週2回、合計4回の通院による定位放射線治療により、多くの症例で腫瘍消失が望めます。当院では早期肺癌に対し良好な治療成績を報告しています。

図1 早期肺癌に対する定位放射線治療

腫瘍にピンポイントで治療することが可能です。
(具体例②)頭頚部癌のオリゴ転移に対する定位放射線治療(図2)。オリゴ転移(少数個の転移)でも、週2回、合計4回の定位放射線治療を行います。最近ではこのような少数個のオリゴ転移で元のがんが制御されていれば、定位放射線治療を行うことで生存率が延長する可能性が報告されています。当院ではオリゴ転移に対しても高精度放射線治療を積極的に行っています。

図2 オリゴ転移に対する定位放射線治療に対する定位放射線治療

少数個のオリゴ転移であれば、定位放射線治療を行うことで生存率が延長する可能性が報告されています。
2. 強度変調放射線治療(IMRT)
がんに放射線を集中し正常組織への照射を抑える治療法です。副作用を抑え、治療後のQOL(生活の質)維持が期待できます。例えば、頚部の放射線治療では唾液腺に照射されることで、味覚や嚥下に障害がでていましたが、IMRTによりこれらの副作用が劇的に軽減可能です。当院では、Radixact(ラディザクト)とTomotherapy(トモセラピー)という2台の最新IMRT専用機と最新高精度放射線装置のTrueBeam(トゥル-ビーム)でIMRTを実施しています。(主な対象疾患)他臓器への転移のないほぼすべての癌
(具体例➀)前立腺癌に対するIMRT(図3)。合計20回の通院治療により、多くの症例でがんの消失が望めます。周囲の直腸や膀胱を避けて、前立腺に集中して高線量を処方することが可能です。癌の治癒率が向上し、直腸出血などの副作用のリスクは最小限となります。

図3 前立腺癌に対するIMRT

周囲の直腸や膀胱を避けて、前立腺に集中して高線量を処方することが可能です。
(具体例②)頭頚部癌に対するIMRT(図4)。合計35回のIMRTにより、副作用を抑え治療後のQOL維持が期待できます。具体的には、従来の放射線治療技術で一部の症例で生じていた唾液分泌低下や味覚障害、嚥下障害は、IMRTにより劇的に軽減可能です。

図4 頭頚部癌に対するIMRT

耳下腺などの正常臓器を避けて、癌とリンパ節に集中して治療することが可能です。
3. 画像誘導放射線治療(IGRT
当院の3台の高精度放射線治療装置は、いずれも治療直前のCT画像が取得可能で、癌の位置を0.1ミリ単位で狙って照射可能です。これを画像誘導放射線治療(IGRT)といい、定位放射線治療やIMRTなどの高精度放射線治療では、必須の技術です。特に当院のRadixact(ラディザクト)に内蔵されているClearRTは、従来法のMVCTに比し画質解像度が大幅に改善され、CT撮像時間も約半分に短縮され、患者さんのご負担は最小限となっています(図5)。
(主な対象疾患)IMRTや定位照射で治療される症例 

図5 Radixact内蔵のClearRTと従来のMVCTの画質比較

ClearRTでは、従来法のMVCTに比し画質解像度が大幅に改善されています。
4. 呼吸同期放射線治療
肺や肝臓の腫瘍は呼吸に伴い大きく動くため、従来の放射線治療技術では照射範囲を広くする必要があります。呼吸同期放射線治療では、呼吸による腫瘍の移動をモニタリングして最小限の照射範囲で治療が可能となっています。当院のRadixact(ラディザクト)搭載のSynchrony(シンクロニー)では、呼吸同期放射線治療の1つである動体追尾照射が可能(図6)で、腫瘍を追いかけ照射することで最小限の照射範囲により副作用のリスクがさらに低下します。
(主な対象疾患)早期肺癌 転移性肺腫瘍 肝臓癌 転移性肝腫瘍 

図6  Radixact内蔵のSynchrony(シンクロニー)による動体追尾照射

肺や肝臓の腫瘍の呼吸による動きをリアルタイムでモニタリングし腫瘍を追尾します。
5. 温熱療法(ハイパーサーミア)
がん温熱療法(ハイパーサーミア)は、がんに的確にエネルギーを伝え加温し、がん細胞を壊死させるがん治療法です。温熱療法は放射線治療など他のがん治療法の併用により効果を発揮するとされます。当センターではがん治療における集学的治療にも積極的に取り組んでいます。

図7  温熱治療装置サーモトロン RF-8 GR edition
温熱療法は放射線治療など他のがん治療法の併用により効果を発揮するとされます。
下記の3診療科で温熱療法を実施しています。
①の対象疾患については、安全で効果的な治療実施のため、年齢や併用療法など原則を設けています。
また予約枠に限りがあり、必ず当院で治療できるわけではないので予めご了承下さい。
ご希望される方は、②の受診方法をご確認のうえ、地域医療連携センターを介して外来受診予約をお取り下さい。
<整形外科>
① 四肢発生悪性軟部腫瘍:70歳までの方。また遠隔転移がなく、化学療法や放射線治療が併用可能な方。
固形がんの四肢発生転移性骨腫瘍:75歳までの方。また痛みが一定以上あり、全身状態が一定以上保たれ、通院での放射線治療が併用可能な方。
② 整形外科:火曜日と金曜日の新患外来。担当医:木村浩明。
<泌尿器科>
① 進行性の腎がん・前立腺がん・尿路上皮がん
② 泌尿器科:温熱療法でご紹介頂く場合、一旦、新患外来枠を受診して頂きます。温熱療法の実施時の担当医:永井隆。
<放射線治療科>
① 悪性腫瘍全般(脳と肺、眼周囲の腫瘍は除く):放射線治療が併用可能で、通院可能な方。
また温熱療法後は、継続して他診療科や紹介先医師のもとで経過観察可能な方。
② 放射線治療科:平日の新患外来。担当医:各曜日の外来担当医。

日本放射線腫瘍学会認定施設

日本放射線腫瘍学会 (Japanese Society for Radiation Oncology: JASTRO)では、安全かつ高精度の放射線治療を推進することを目的として施設基準を策定し、その基準を満たす施設をJASTRO認定施設として認定しています。

放射線治療装置の品質管理・保証

高精度放射線治療の質を担保するために、放射線治療装置の安全管理にも努めています。関連学会のガイドラインに則り、装置の品質維持を目的とした管理プログラムを作成し、放射線治療スタッフが実施することで装置の品質保証をしています。また、装置メーカーによる定期点検も実施しており、装置の安定稼動を常に維持できるように心掛けています。さらに、自施設の放射線量の出力確認だけでなく、第三者機関 (医用原子力技術研究振興財団)に依頼し、出力線量の正確性の客観的な評価も受けています。

病院機能評価

病院機能評価認定 3rdG:Ver.2.0一般病院3 (主たる機能) 『3.2.2 放射線治療機能を適切に発揮している』においてS評価を取得しました。医療機能評価機構からも高い評価を受けており、質の高い放射線治療を安全に提供しています。

スタッフ紹介

役職 氏名
 センター長 樋渡 昭雄
 副センター長 富田 夏夫
 副センター長 笠井 治昌
◎医師 10名
  ・放射線治療専門医 5名
◎診療放射線技師 11名
  ・放射線治療専門放射線技師 7名
  ・治療専門医学物理士 2名
  ・医学物理士 6名
  ・放射線治療品質管理士 7名
◎看護師 13名
  ・がん放射線療法看護認定看護師 1名
◎受付職員 2名
以上の学会・機構の外部評価を受けており、患者さんに 質の高い放射線治療を安全に提供しています。