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食道疾患センター


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名古屋市立大学病院 食道疾患センターのご紹介

 食道疾患センターでは、消化器内科、消化器外科および放射線科の医師が一体となり、診療科の枠を超えた専門的なチーム医療を提供しています。食道がんや機能性食道疾患などの食道疾患は治療難度が高いため、複数の診療科が連携して治療にあたることで、より適切な治療が可能となります。特に食道がんに対しては,個々の患者さんの状態、がんの進行度に合わせた集学的治療(抗がん剤による治療、放射線による治療、手術による治療などを組み合わせた治療)を内科、外科、放射線科と合同で行っています。最先端の医療機器、高度な医療技術を駆使した先進的な食道疾患の治療に精力的に取り組んでいます。

食道がん

 当センターでは、早期食道がんに対しては、全身への負担の少ない内視鏡治療を行っています。進行した食道がんに対しては、病期や全身状態により外科的手術、内視鏡手術、がん免疫療法を含む薬物療法、放射線療法、これらの併用による集学的治療を行います。当センターでは、消化器内科、消化器外科および放射線科が診療科の枠を超えた専門的なチーム医療を提供しています。

早期食道がんの内視鏡治療(ESD)

 早期食道がんに対する内視鏡治療に積極的に取り組んでいます。早期食道がんは、リンパ節転移の可能性がほとんどない粘膜固有層までに食道がんの浸潤が留まるもので、内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)により完治が可能です。内視鏡治療では身体への侵襲が少なく、術後も食道が残るため後遺症も少なく、入院期間は1週間程度と短期間です。当院では年間約30症例のESDの治療実績があります。
・内視鏡的年末下層剥離術(ESD)
 内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)は高周波ナイフを用いて腫瘍の周囲の粘膜を切開し、粘膜下層と筋層の間を剥離(はくり)・切開して病巣を一括して摘出します。

・食道がんのESDによる切除症例

   食道がんのマーキング       食道がんの周囲を切開         食道がん切除後         切除した食道がん

食道がんの外科的手術治療(ロボット支援下手術)

 当センターは、年間に60人以上の患者さんの食道がん手術を行っており、豊富な治療経験を有する施設の一つです。

 早期の食道がんに対しては、内科の先生により、内視鏡下粘膜切除術(胃カメラでがん部を切除する方法:EMR)を行い、食道を摘出することなくがんを摘出します。
 早期ではない食道がんでは外科の先生が手術を行いますが、大きく開胸や開腹することはせずに、全症例で胸に小さな穴をあけてカメラを見ながら食道を切除する方法(胸腔鏡下手術)で行います。現在は、低侵襲かつより精緻な手術を行うべく積極的にロボット支援下手術を行なっています。また、喉に近い場所に食道がんができた際には、可能な限り喉頭(これを摘出すると声が出なくなる)を温存するため、放射線科の先生とともに放射線化学療法で治療したり、喉頭温存手術を積極的におこなっています。食道がんの手術は最も大きな手術の一つとされ、術後の合併症の頻度が高いことが報告されております。外科的治療を安全に行うには、習熟した手術手技だけでなく、手術後の管理が重要なポイントとなり、食道がんに精通した食道外科専門医と集中治療の専門医による治療が必要と考えられます。当科ではICU(集中治療部)との協力体制のもとに治療を進めており、術後の経過は良好です。他の消化器がんに比べ頻度の高い合併症とされる縫合不全(縫い合わせた腸管同士がうまく癒合しないこと)の発生は全国平均(約12%)と比べても約4%と低率です。輸血に関しても丁寧で精緻な手術により出血量を最小限にとどめ、通常の場合、術中に輸血を必要としません。

 高度の進行期がんにおいては一般的には抗がん剤、放射線を組み合わせた治療が中心となりますが、状況に応じて、内科・外科・放射線科と密に連携をとり、より治療効果を上げるために切除可能になれば手術を行います。QOL(生活の質)と治療効果を加味した上で積極的に治療を行い良好な成績を上げています。
 手術療法以外では、がん部の狭窄により食事摂取が困難な場合に対する食道内ステント留置術(がんによる狭窄部に金属性の筒を挿入して拡張させ、食物の通過を可能とする治療法)、食道がんが気道に進展した場合におこる気道狭窄に対する気管内ステント療法なども行っています。

食道がんの放射線治療

1.放射線治療とは
 放射線の照射でがん細胞内のDNAにダメージを与え、がん細胞を死滅させる治療です。原則として平日に毎日行います。治療台に仰向けになり、1回の治療時間は入室から退室まで通常15分程度です。通常、治癒を目指した治療の場合、30回程度行います。

2.放射線治療の適応
 ①高齢者や持病で手術の負担が大きい場合、②手術ができても患者さんが希望されない場合、③進行度により手術ができない場合、などが根治的な治療適応となります。
 肺など他臓器に転移がある場合でも、がんが原因で食事が通りにくい状態の患者さんでは、通過障害の改善を目的に放射線治療を行うことがあります。

3.当院の放射線治療の特徴
 放射線治療の最大の特徴は、形態と機能の温存です。当院では最新の放射線治療機Radixact(ラディザクト、図1)やTomotherapy(トモセラピー)により、より副作用の少ない治療を心がけるとともに治療成績の向上を目指しています。
 食道がんの放射線治療では、がん病巣のみでなく、リンパ節再発を予防するため周囲のリンパ節領域も含めて照射を行うため、広汎な照射野となります。従来法では、心臓へ放射線が多く当たり、心臓の合併症を引き起こすことが問題となっていました。当院の高精度放射線治療機による強度変調放射線(IMRT)により、心臓への被曝を低減可能です (図2)。

図1

図2

Radixact(図1):2017年アジアで当院初導入。360度からの照射で病変部に集中可能な高精度放射線治療装置。高画質CTを撮像できるClearRTを使用し、位置のずれを補正可能な画像誘導機能(IGRT)も有する。

4.オリゴ移転(オリゴメタ)
 オリゴメタとは、少数個の、通常は小さな転移巣があるだけの状態を指します(オリゴは少数を意味します)。最新の海外の報告では、オリゴメタならピンポイント照射を行うことで生存率が延長する可能性が示唆されています。当院ではオリゴメタに対しても高精度放射線治療を積極的に行っています(図3)。

図3

再発食道がんに対する光線力学療法:Photodynamic therapy(PDT)

1.PDTとは
 PDTとはがん組織に集積性をもつ光感受性薬剤を注射し、レーザー光線照射により、がん細胞のみを選択的に破壊する治療法です。化学放射線療法後または放射線療法後の局所遺残・再発食道がんに対して,第2世代の光感受性薬剤であるタラポルフィンナトリウム(レザフィリン®)と半導体レーザを用いたPDTが2012年より当院でも医師主導治験が行われ、2015年に保険承認されました。粘膜下層までの深達度の食道がんで約80%で完全消失しています。

2.PDTの対象となる患者さん
 食道がんのPDTを受けるには、食道がんに対して放射線治療を受けていることが条件となります。そのほか、食道がんの部位やがんの大きさや深さ(深達度)が下記の条件を満たしていることが必要となります。よく分からない場合は、担当医の先生より当センターにご紹介をお願いします。

 治療の流れ
  ① PDT当日:光感受性物質であるレザフィリン®を血管内に注入します。
  ② PDT当日:投与して4時間から6時間ほど経過してから、食道がんに内視鏡下にレーザー照射を行います。
  ③ PDT1日後:内視鏡検査を行います。追加でレーザー照射を行う場合があります。
  ④ PDT2日後:前日にレーザー照射を行った場合は内視鏡検査を行います。
  ⑤ PDT7日後:術後の確認のため、内視鏡検査を行います。
  ⑥ PDT14日後:もう一度内視鏡検査にて確認を行い医師の判断により、退院可能となります。

食道がんの放射線治療

食道がんの薬物治療(がん免疫療法、抗がん剤治療)

1.がん免疫療法とは
 食道以外の臓器に食道がんが転移している手術不能進行食道がんの患者さんに対しては,患者さんの抗がん免疫を高めるがん免疫療法が保険適用になっています.ニボルマブ(商品名:オプジーボ),イピリムマブ(商品名:ヤーボイ),ぺムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の3種類の免疫チェックポイント阻害剤を病態に応じて抗がん剤と併用したり,ニボルマブとイピリムマブを併用したり,あるいは単剤で使用します.患者さんの血液中のT細胞というリンパ球が活性化され,T細胞ががん細胞を攻撃する治療です.これまでの抗がん剤治療とは異なり,下垂体機能低下や甲状腺機能障害,1型糖尿病などの内分泌系の副作用が稀に発生しますが,当院は総合病院ですので,内分泌,糖尿病の専門医とも密に連携し安心して治療を受けていただくことが出来ます.

2.がん免疫療法の適応
 肝臓,肺などの食道以外の臓器に食道がんが転移している手術不能進行食道がん(ステージ4)の患者さんや,ステージ2,3で術前化学療法,術前化学放射線療法後に手術を受け,病理検査でがん細胞の完全消失が得られなかった患者さんが適応になります.

3.当院の薬物治療の特徴
 抗がん剤による化学療法や免疫チェックポイント阻害剤を使用したがん免疫療法を受ける場合,最初の1,2週間は入院で治療を行いますが,その後は,外来で治療を受けていただくことが可能です.当院は特定機能病院,地域がん診療連携拠点病院に指定され,がん薬物療法専門医,がん治療認定医やがん看護専門看護師,がん化学療法認定看護師,がん性疼痛看護認定看護師なども在籍し,外来化学療法室(喜谷記念がん治療センター)も充実していますので安心して治療をうけていただくことができます.さらに当院はがんゲノム医療連携病院にも指定されており,がん細胞のゲノム情報(遺伝子情報)を遺伝子パネル検査により詳細に検査し,治療に役立てることも可能です.当院ではがんゲノム外来も開設されており必要におうじて相談が可能な体制があります.

機能性食道疾患

 内服薬で症状が改善しない胃食道逆流症や、アカラシアやジャックハンマー食道などの機能性食道疾患など難治性の食道疾患に対しては、食道内圧測定や24時間pH、インピーダンスモニターなど専門的な検査を行ったうえで、内視鏡治療や外科手術など適切な治療を選択して行っています。

食道機能生理検査

【食道内圧測定検査】
 鼻から細長い管(圧センサ)を食道に留置し、嚥下(飲み込むこと)中の食道運動機能を調べます。

圧センサ

食道内圧の解析

【24時間pHモニター検査】
 24時間、鼻から細長い管(pHセンサ)を食道に留置し、胃酸の食道への逆流の有無について調べます。

pHセンサ

24時間pHモニター解析

食道アカラシア

 アカラシアとは食べ物を飲み込んだ際に,食道と胃の接合部に存在する筋肉がゆるまずに,食道の動きが鈍くなることで,食べ物が食道に残ってしまい,食道が膨らむ病気です。

【症状】
 ・食べた時にのどにつかえる感じ
 ・飲み込んだ後の胸の痛み
 ・食べた物がのどに逆流する
【検査】
 ・食道造影検査(バリウムを飲みます)
 ・食道内圧検査
 ・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
【治療】
 ・内服治療(効果が少ない場合が多い)
 ・内視鏡治療
 ・手術治療
【食道アカラシアの手術】
 食道下部の筋肉が過剰に収縮して流れが悪くなっている場合が多く、異常に収縮する筋肉を切開して流れを改善する手術を行います。

食道裂孔ヘルニア/逆流性食道炎

 食道裂孔ヘルニアは胃から食道に逆流をしないようにする筋肉がゆるむ病気です。その結果、胃液が食道に逆流する病気が逆流性食道炎です。

【症状】
 ・胸やけ
 ・食べた物が逆流する
【検査】
 ・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
 ・食道造影検査(バリウムを飲みます)
 ・24時間食道PH検査(細いセンサーを飲み込んで胃液の逆流を検査します。)
【治療】
 ・内服治療(大半の場合、胃酸を抑える薬で改善します。)
 ・手術治療(内服薬で改善しない場合や様々な原因で薬が飲めない場合などに行います。
【食道裂孔ヘルニアの手術】
 食道裂孔が開いて胃液の逆流による不快感がでる場合に手術治療を行います。

好酸球性食道炎

 食物のつかえ感,胸やけ,呑酸などの症状で発症し,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,食物アレルギーなど方に発生しやすいのアレルギー性疾患で,最近わが国でも増加傾向にあります.内視鏡検査で特徴的な縦走溝,白斑,気管様狭窄を認めることがありますが,生検組織のみで診断されることもあります.胃酸分泌抑制薬で治癒することもありますが,無効な場合にはステロイド治療や食事療法などが必要な場合もあります.当院では,サイトカインに対する抗体薬剤の皮下注射の国際共同治験も行っています.

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

 胸やけ,呑酸,胃もたれなどの症状で発症します.逆流性食道炎が原因で,慢性咳嗽,喘息,咽喉頭違和感症,睡眠障害,歯の酸蝕症,慢性中耳炎,慢性副鼻腔炎などを引き起こすことも知られています.内視鏡検査で食道に縦走傾向にあるびらんや潰瘍がみられる場合をびらん性GERD(逆流性食道炎)と呼び,症状はあるけれども,内視鏡検査で食道粘膜に異常がない場合を非びらん性GERD(NERD)と言います.一般的には胃酸分泌抑制剤の内服で治癒しますが,重症の場合は胃運動改善薬や漢方薬が奏効する場合があります.薬剤抵抗性の胃食道逆流症に対しては,2022年4月から内視鏡的治療も保険適用になっています.

食道疾患センター初診外来のご案内

外科:月曜日 10時~11時30分
内科:水曜日 14時30分〜15時00分,木曜日 11時30分~12時00分
完全予約制