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人工透析部



当院の人工透析部誕生の歴史は 1971 年に遡ります。「検尿異常から末期腎不全まで最高水準の医療で腎臓病根治に取り組み,腎不全に至ったならばシャントを作成して適切に透析を導入する」一連のすべてを患者さんと共に歩む伝統を継承しています。この伝統を重んじつつ,革新的にあらゆる血液浄化療法に対応してきました。血液浄化には透析やアフェレシス療法が含まれます。健康な腎臓は尿中に血液中から過剰な水分や老廃物を除去し,ナトリウムやカリウムを適正な値に調節し,さらに血液を弱アルカリ性にしています。このような腎臓本来の働きの一部を代行するのが透析です。アフェレシス療法は様々な疾患 (消化器/肝疾患・リウマチ/膠原病・神経疾患・薬物中毒・高脂血症/閉塞性動脈硬化症) において病状を悪化させている物質を血中から除去する治療です。肝硬変やがんなどによって貯まった腹水や胸水を処理してアルブミンなどの有用なタンパク成分を回収して点滴でお体に戻す腹水濾過濃縮再静注法 (CART) も行っています。

診療について

人工透析部で行う治療の多くは採血のように血液を体外の回路に引き出して点滴のように血管内に戻す途中で、特殊なフィルターを血液が通る際に血液が浄化される共通点があります。(これを体外循環といいます。写真→)治療目的によってフィルターの種類が異なります。

透析

慢性腎不全、急性腎不全の患者さんの腎臓本来の働きの一部を代行するのが透析です。透析には血液透析(HD)と腹膜透析(CAPD・APD)の2種類があり、当院では両方の治療を受けて頂けます。

血液透析(HD)とは

HD 治療の体外循環で用いるフィルターはダイアライザー(写真↓)とよばれます。

ダイアライザーの中には数千~1万本のファイバーが充填されています (写真↓)。

このファイバーはホロファイバーもしくは中空糸と呼ばれストローのように管状です。ダイライザーの中かつファイバー1本1本の中を血液が流れ (赤矢印)、ダイアライザーの中でファイバーの外を透析液が流れます(緑矢印)。

ファイバーは血液から除去したい物質が透析液に滲みだす (もしくは吸着する) 素材であったり小さな穴が開いていたり工夫されています。血液を十分にキレイにするためには一定の血流量を体外循環させる必要があります。採血のように静脈を刺しても十分な血流を得られず動脈を頻繁に刺すことは血管を傷めます。そこで動脈と静脈に数mm の窓を開けてつなぎ合わせる自己血管内シャントや動脈と静脈を人工血管でバイパスする人工血管内シャントが必要となります。
まだ透析を要しない時期 (1月以上前) から予めシャントを作成しておかないと透析を開始する時点でシャントを用いることができず、カテーテルを穿刺して透析を導入します。カテーテル穿刺には危険な合併症があり得ること、シャントを作成したからといって透析導入が早まるわけではないことを理解して適切な時期に手術をすませることが大切です。

腹膜透析(CAPD)とは

お腹の中の空間を腹腔とよびます(上図の*印)。腹腔の内壁や臓器(胃、腸、肝臓など)の表面は腹膜で覆われています。この腹膜にはたくさんの毛細血管があります。この腹膜をダイアライザーの代わりにして透析を行うのが、腹膜透析です。腹腔にカテーテルを留置しておき、このカテーテルから透析液を注入して一定時間貯留すると腹膜の毛細血管から老廃物が透析液に滲みだします。老廃物の染み出した透析液をカテーテルから廃液します。この操作を繰り返すのがCAPDです。

アフェレシスとは

体外循環を行ってお体に不都合な物質を除去する治療をアフェレシス(ギリシャ語で取り除くの意)といいます。血液透析もアフェレシスの1つといえます。アフェレシスは透析以外にも下表のごとく多彩な疾患の治療として行われます。
【例】本来、免疫とは“自分”と“異物”を区別して体内に入り込んだ“異物”を攻撃するシステムです。この攻撃に用いるミサイルが抗体です。自己免疫性疾患 (=膠原病) の患者さんでは自分に対して免疫機構が働いて“自分”を攻撃してしまうわけです。そこでこのミサイル=異常免疫グロブリンを除去するのが血漿交換 (PE)・二重膜血漿交換 (DFPP)です(写真↓)。

【例】関節リウマチ・潰瘍性大腸炎・クローン病などでは活性化した白血球が各々の臓器に悪影響を与えています。この活性化した白血球を積極的に除去する治療が白血球除去療法です (G-CAP, L-CAP)(写真左はG-CAP用のカラム;右は除去された白血球)。

【例】家族性高コレステロール血症・閉塞性動脈硬化症 (ASO) ではLDLアフェレーシスを行います。LDLコレステロールは陽性に荷電しておりカラムでは”陰性に荷電したビーズ”でLDLを吸着します(写真↓)。

炎症性腸疾患 (潰瘍性大腸炎・クローン病など) G-CAP, L-CAP
肝疾患 (潰瘍性大腸炎・クローン病など) 血漿交換 (PE)
リウマチ/膠原病(悪性リウマチ・SLEなど) 血漿交換 (PE)・血漿吸着(PA)・二重膜血漿交換 (DFPP)・クリオフィルトレーションなど
薬物中毒 血漿交換 (PE)・直接血液灌流 (DHP)
家族性高コレステロール血症・閉塞性動脈硬化症 (ASO) LDL アフェレーシス
血液疾患(多発性骨髄腫・TTP・HUSなど) 二重膜血漿交換 (DFPP)・血漿交換 (PE)
難治性ネフローゼ症候群 LDL アフェレーシス
神経疾患 
(多発性硬化症・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎・ギランバレー・重症筋無力症など)
血漿吸着 (PA)・二重膜血漿交換 (DFPP)・血漿交換 (PE)
皮膚疾患 (中毒性表皮壊死症など) 二重膜血漿交換 (DFPP)・血漿交換 (PE)

腹水濾過濃縮再静注法 (CART) とは

肝硬変やがんなどによって貯まった腹水や胸水からアルブミンなどの体に大切なタンパク成分を回収して点滴でお体に戻せるようにする治療です。

診療実績

2021年度 2020年度 2019年度
HD 1740 2007 1998
G-CAP 192 100 124
CART 33 30 27
PA 1 0 6
LDLアフェレーシス 0 0 2
PE 0 10 9
DFPP 3 0 3
合計(件) 1969 2147 2169

当院人工透析部の特徴

患者さんお一人ずつについて毎透析前に医師・看護師・臨床工学技師によるタイムアウト/ブリーフィングを行っています。現病の経過・身体状況・データ(体液量・血圧・貧血・電解質・骨ミネラルの各項ごとに)の評価にとどまらず,心情を慮り苦痛を減らせないか議論して,よりよい透析治療を検討し合うカンファレンスも多職種が参加して毎週開催しています。カンファレンスでは透析液清浄化の状況も確認しています。
腎臓病を正確に診断し根治を目指し,腎不全に至ったならばシャントを作成して適切な透析医療を行う伝統を重んじおり,「患者さんのすべてを診る一環としてシャント治療も行っている」ことも当院の特徴です。シャントの手術・PTAを年間100件以上行っています。大学病院の特性である医学・薬学・看護学の教育機関,次世代を担う若手医師の育成の社会使命も担っております。この点はしっかりとした医療を行う根拠と受け止めて頂き御協力をお願いいたします。

スタッフ紹介

透析患者さんには心臓や脳血管の疾患・感染症・悪性腫瘍の合併が多くアフェレーシスを要する疾患も多岐にわたりますので、当院のあらゆる診療科で治療を受ける患者さんが人工透析部で治療を受けて頂くこととなります。このため人工透析部では主に腎臓内科医師一同・専任看護師・臨床工学技士一同が診療に携わっておりますが (一部を下表に記します)、それは当院のすべての医療従事者・全診療科・全部門の皆様と支え合うチーム医療の一環と考えております。
(令和4年9月1日現在)
役職 氏名
部長 濱野 高行
副部長 水野 晶紫
医局長 小野 水面
腎臓内科副部長 村島 美穂
友斉 達也
春日井 貴久