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がん医療支援部


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「がん対策基本法」に基づき国で策定された「がん対策推進基本計画」で、掲げられている事項のうち、就労就学を含む各種相談支援、アピアランスケア、世代ごとに特化した医療サービス、がん地域連携パス等、がん医療を側面から支えることを目的に設置されました。
がん医療において、がん治療のみならず、患者さんからのニーズに応えられるよう広い視野をもって療養生活を支えてまいります。

部長あいさつ

片岡 洋望 部長

がん医療支援部は、がん医療を受けられる患者さんやご家族を多方面から支援することを目的としています。
1.がん患者さんの就労支援
2.高齢者のがん医療支援
3.小児、AYA世代のがん医療支援
4.アピアランスや生殖機能温存等の情報提供・相談支援
5.がん医療における地域連携・社会連携
などの活動を柱にがん相談支援の充実を目指します。
各専門領域の医師、薬剤師、看護師、社会福祉士など多職種で構成されている部門です。
がん経験者(ピアサポーター)による患者相談会も定期的に開催しています。
がん相談支援センター(病院1階)にお立ち寄りいただき、どのような内容でも結構ですのでお気軽にご相談ください。

がん対策推進基本計画

「がん対策基本法」に基づいて、5年~6年ごとに計画されるがん対策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されたものです。現在は第4期(令和5年3月28日閣議決定)の期間中であり、「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」ことが目標とされています。
詳細は、以下の厚生労働省ホームページをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html

就労支援の充実

がん医療を含む医学の進歩に伴って、通常の生活を送りながら長期間にわたって治療を受ける患者さんや、「がん」を克服した経験を持つ患者さんが増えています。
「がん」の治療成績の向上の一方で「がん」の患者さんへの考え方が、社会環境面で追い付いていない状況がみられます。
例えば、治療の過程で副作用の問題に直面して、仕事を休みがちになること、やむなく離職してしまう患者さんも少なくありません。このように、就労可能な年齢であるにもかかわらず「がん」が原因で社会との間に溝ができてしまい、「働きたい」という気持ちを持つことに抵抗を感じてしまうかもしれません。
名古屋市立大学病院では、社会福祉士をはじめとする平時の相談の他、月に一度、複雑な年金制度や労働社会保険の諸手続きについて、愛知県社会保険労務士会の社会保険労務士による相談会を開催しています。※就職の斡旋等は行っておりません。



[社会保険労務士相談]
受付 :外来診療棟1階 がん相談支援センター(105患者サポートセンター)
日時 :毎月第1水曜日 10時00分から12時00分 ※予約優先
     ※祝日の場合は、翌週水曜日

 また、愛知県産業保健総合支援センターの保健師・社会保険労務士による治療と仕事の両立に関する相談会も開催しています。治療と仕事の両立に関する情報提供、職場との調整支援を行います。

[治療と仕事の両立支援相談]
受付:外来診療棟1階 がん相談支援センター
日時:相談を受け付けた1週間以降の日時で、相談者の都合に合わせて調整します。
※事前予約制
※職場での待遇を改善するものではありません
※がん以外の病気の方も相談できます
※退職した方は対象外です

高齢者のがん対策

がんに罹患する患者さんのうち、毎年7割程度が高齢者とされる65歳以上の方です。
高齢者とされるがん患者さんでは、他の世代のがん患者さんに比べて、がん以外に生活習慣病などの基礎疾患等をはじめ、過去にも手術を伴うような病気をした経験をお持ちの方や、長年にわたって指定難病の療養をしている方もいらっしゃいます。
担当医は高齢者とされるがん患者さんの基礎疾患を含めた現病や既往歴、血液検査等の結果などから、いずれの治療であれば耐えうる状態であるかなど判断して、患者さんごとに最適な治療を提案します。
治療の提案の根拠となる判断材料の中でも、患者さんの状態が客観的に評価できる手段のひとつにスクリーニングと呼ばれる方法があります。スクリーニングにも様々な種類があり、簡易的なスクリーニングでは質問形式によるものがあります。
名古屋市立大学病院では、高齢者のがん患者さんに向けてG8というスクリーニングツールを採用しています。高齢者機能評価(GA)のひとつで、患者さんへ簡単な質問を行うなどして評価を行います。
G8スクリーニングでは、例えば、がん薬物療法を予定しているがん患者さんの身体面や精神面、栄養状態などのリスクの有無などについて簡単な評価ができ、薬による副作用の発生をできる限り回避できるように、ひとりひとりにあわせた薬の選択に活用できます。



高齢者機能評価(GA):暦年齢だけで状態を把握することが困難である。GAでは身体機能の低下、予後予測、
            治療に伴う副作用発生の予測など患者の問題点を抽出できる可能性がある。
G8:GAのツールのひとつ。数分で行える8つの事項に回答(調査)してもらって、患者の状態を把握する。

小児期、AYA世代の方々への支援

小児期やAYA世代の方々は、年代ごとの変化が大きいため、患者さんご本人・ご家族を取り巻く環境やニーズが、ひとりひとりでまったく異なってくると考えられています。がんに罹患した場合、治療や療養生活を、ご家族と共に乗り越えていく場面が多いことでしょう。

小児  :一般的に0歳から15歳未満の方が対象とされています。
AYA世代 :一般的に思春期から若年成人を意味し、15歳から39歳までの方が対象です。
小児AYA世代は、生後間もない新生児から小中学生・高校生をはじめとする就学世代から就職、結婚、出産、子育ての世代など、ライフステージが大きく変化する年代です。
小児AYAがんは希少がんといわれており、当院では専門スタッフががん拠点病院、小児がん連携病院として治療を提供するとともに、患者さんご本人、ご家族の身体的、精神的な問題にも対応できるよう相談支援についての体制を整えています。

<入院中の療育・就学に関する支援>
抗がん剤等を投与するがん薬物療法や放射線治療は患者さんにとって負担となります。本格的な治療が始まると入院が長期に及ぶこともあるため、小さいお子さんにとっては、発達成長においては大事な時期でもあり、小学生をはじめ就学世代のがん患者さんにとっては、学業にも影響するため、大きな不安を感じる方がいらっしゃることが想定されます。当院では、病棟保育士による療養環境の確保、また入院中であっても、治療に影響がない範囲で、無理のない学業の支援を行っています。

小学生
名古屋市立汐路小学校 特別支援学級と連携し、教員が院内学級で授業を行います
中学生
県立大府特別支援学校と連携し、教員が学習スペースなどで訪問授業を行います
高校生
愛知県内の高校に在籍する病気療養中の学習支援制度利用が可能です
在籍校との同時双方向のオンライン授業、病院などへの訪問教育、コーディネーター相談を行います
相談については、通学中の高校に名古屋市立大学病院の社会福祉士から個別で相談、
もしくは県立大府特別支援学校の医教連携コーディネーターとの相談が可能です
<退院後のフォローアップに関する支援>
小児AYAがんの治癒率が向上しており、全体で80%以上の方ががんを乗り越えて社会に復帰されています。がんが治った後の成長、発達や、治療による合併症が問題となり、就学や就職に影響を与えることもあります。できるだけ健やかに社会生活が送れるように、当院では、小児AYAがん治療後の長期フォローアップ外来を設けています。治療の強度にあわせた合併症のスクリーニング検査や対応とともに、相談窓口とも連携してみなさんが社会で活躍できるようサポートしてまいります。

<妊孕性の温存に関する支援>
がんの治療では、その内容によっては妊孕性(妊娠するための力)に悪影響を及ぼすことがあります。

妊孕性の温存とは、治療前に、あらかじめ、精子、卵子、受精卵、卵巣などを採取して凍結保存しておくことで、将来に妊娠・出産できる可能性を残すことをいいます。
妊孕性の温存が可能であると主治医が判断し患者さんが希望された場合、患者さんの年齢やパートナーの有無、がんの種類、がんの進行具合、予定されている治療の内容、治療の開始時期などによって、どの方法で行うか検討することになります。
当院では、小児期やAYA世代のがん患者さんやそのご家族に向けて、将来お子さんをもちたいという希望に寄り添った相談をお受けする専門外来「『がん治療と妊娠』相談外来」を開設しています。抗がん剤をはじめとするがん治療に用いる薬や放射線治療が妊孕性へ及ぼす影響や、妊孕性温存治療とはどのような方法なのか、どこでできるのか、自分は妊孕性温存治療を受けることができるのかなどについての情報を提供し、妊孕性温存治療を受けるかどうかの意思決定を支援いたします。
妊孕性の温存に関して、精子や卵子等の採取、がんを治療した後に妊娠・出産が可能であると判断されてからの体外受精や受精卵移植などの医療行為は健康保険を用いる保険診療の適応外となりますが、条件によっては、妊孕性温存治療にかかる費用に対して国や自治体からの助成を受けることができます。

がん患者さんに向けたアピアランスケア(外見の変化に対するケア)に関する情報提供

がん患者さんの中には、手術、がん薬物療法(化学療法)、放射線治療などを経て、外見が変化してしまう方もいらっしゃいます。
外見の変化の典型として、脱毛(頭髪、まゆげ、まつ毛)、むくみ、皮膚の変色、爪の変化(割れ、はがれ、変色)などがあります。
外見の変化に伴って他者との接触を避け、自宅や自室に引きこもりがちになってしまい、社会から孤立してしまうなど生活に支障をきたしてしまうことも懸念されます。
名古屋市立大学病院では、相談支援の中で外見の変化に対するケアの提案もしております。また、アピアランスケアに関して、がん患者さん用のウィッグを販売している企業の専門員が、患者さん向けの相談会を行っています。
詳しくは、がん相談支援センターまでお尋ねください。

[がん相談支援センター]
場所:外来診療棟1階(105がん相談支援センター)
時間:9時00分から16時00分  ※土日祝日除く

がん医療における地域連携・社会連携

名古屋市立大学病院では、患者さんが身近な環境でも質の高いがん医療を安心して受けられるようにがん地域連携パスを活用しています。がん地域連携パスとはがん診療連携拠点病院(名古屋市立大学病院)とかかりつけ医(地域医療機関)が患者さんの退院後の治療計画を共同して作成したものです。この計画に基づき、かかりつけ医との間で患者さんの情報を共有し、日常の診察、薬の投与と相談はかかりつけ医で行い、専門的な治療や検査は名古屋市立大学病院で行っています。現在、乳がん、前立腺がんの患者さんはがん地域連携パスを活用して診療しています。がん地域連携パスを活用することで、患者さんは二人主治医制になり、切れ目のない医療を受けることができます。

がん体験者(ピアサポーター)による相談会
 研修を受けたがん体験者の方が不安や悩み、疑問を一緒に考えてくれます。「他の方はどうされているのかな?」というときは、ピアサポーター相談会にお気軽にお立ち寄りください。

[がんのピアサポーターによる相談会]
日時:毎月 第2金曜日10時00分から12時00分
場所:中央診療棟1階 アトリウム(スターバックスコーヒー前)