免疫性血小板減少性紫斑病
1 疾患について
免疫性血小板減少性紫斑病は、血球成分のひとつである血小板に対して自己抗体が生じることによって血小板減少をきたす血液疾患です。産生された血小板が自己抗体により破壊されることが血小板減少の要因となり、血小板産生能は維持されているかむしろ亢進しています。血小板に対する自己抗体が出現する原因が特定できない特発性のものと、自己免疫疾患等に続発する二次性のものがあります。
2 症状
血小板は止血に大きな役割を果たしているため、血小板数がある程度以上低下すると出血症状が現れます。初期症状としては皮下出血が代表的で、打撲した部位の出血斑がなかなか引かなかったり、打撲した覚えがないのに出血斑がみられることがあります。歯肉出血、口腔粘膜出血、鼻出血等の粘膜出血がある場合は血小板減少がかなり進行している可能性があります。脳出血、肺出血、消化管出血等の臓器出血は重篤な経過をたどることがあります。自覚症状が無いにもかかわらず、血液検査で偶然に異常が見つかることもあります。診断を確定するための特異的な検査法はなく、他に血小板減少をきたす疾患を除外した上で、臨床経過や血液検査結果を踏まえて総合的に診断を下します。
3 治療法
血小板数や出血の程度によって治療適応の有無を判断します。血小板減少の程度が軽度の場合は無治療経過観察とするのが一般的です。初回治療としてはステロイドが第一選択となります。他にも、トロンボポエチン受容体作動薬、免疫グロブリン大量療法、ピロリ菌除菌、リツキシマブ療法、脾臓摘出術、血小板輸血等の治療法があり、これらをステロイドと併用もしくは単独で行うことがあります。当院では科学的根拠に基づく最善の治療 (標準治療) を提供することを重視します。その上で個々の患者さんの病状、ご希望、どのような治療目標を設定するかといった要素を踏まえて最適な医療を提供するよう努めています。