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診療科・部門

心臓血管外科


診療科のご案内

2021年4月の大学附属病院化以降も変わることなく患者さん第一主義のもとに24時間365日の診療体制のもと3つの理念(以下)で全ての心臓血管疾患の治療に対応しております。

『安心安全(十分な評価・説明による患者–医療チームの相互信頼関係)』
『低侵襲(痛みが少なく体への負担が少ない)』
『高い質(高い技術に伴う先進性と優れた治療効果)』

特長

安心安全な治療のために心臓外科チーム全員による朝夕2回の病棟・集中治療部回診、循環器内科・臨床工学室も含めたハートチームによる手術適応や術後評価のための循環器カンファランス、麻酔科や手術部看護師も含めた手術関連スタッフでの術前カンファランス、看護師・リハビリ科・ケースワーカーとともに術後リハビリから退院支援のための病棟カンファランスをそれぞれ毎週実施しています。
全ての領域の心臓血管外科疾患(1.狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、2.心臓の弁の機能障害である心臓弁膜症、3.大動脈瘤(コブのように膨らんだ状態)や大動脈解離(動脈壁が裂けた状態)などの大動脈疾患、4.生まれつき心臓に穴が開いている心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などの先天性心疾患、5.手足の血管の病気である末梢血管疾患)に対して適切な手術を選択する中で当科が積極的に実施している低侵襲治療としては、
(1) 心拍動下冠動脈バイパス術
(2) 小切開による弁膜症手術
(3) 大動脈に対するステントグラフト手術
(4) 下肢静脈瘤でのレーザー手術・グルー手術
等があります。
また、これらの手技と併用が可能な質の高い手術として

(1−1) 冠動脈バイパス術での安定した血流の長期供給が可能な動脈グラフトを複数利用する術式
(1−2) 冠動脈バイパス術で1本の静脈グラフトで数カ所の冠動脈吻合する術式
(1−3) 内視鏡を用いたグラフト採取手技
(2−1) 弁膜症手術では人工弁ではなく自分の弁を修理する弁形成術
(3−1) 大動脈手術では人工血管置換術とステントを合わせたハイブリッド治療
(3−2) 頸部血管へのバイパス路作成でより心臓に近い大動脈へのステント内挿
(4−1) 皮膚潰瘍を伴う重症下肢静脈瘤に内視鏡を用いた機能不全静脈の離断術

これらの治療は低侵襲手術と共に術後の生活の質の向上に良い影響を与えると考えます。以下、主な低侵襲手術の内容についてご説明します。

主な疾患・治療法

(1)心拍動下冠動脈バイパス術

狭心症や心筋梗塞など心臓の筋肉に血流を供給する冠動脈が動脈硬化で細く狭くなったり閉塞して血流不足が生じ激しい痛みや突然死の原因となる疾患で、内科的治療が適さない場合に冠動脈バイパス術を行います。患者さん自身の体から血管(グラフトと呼ばれます)を採取して冠動脈の病変部(内腔が狭い・塞がっている)より先に血液供給のための新しい血行路を作ります。

図1

当科では冠動脈バイパス術の80%程度が人工心肺を使用しないで心臓を動かしたままで行う心拍動下冠動脈バイパス術です。現在の上皇陛下もお受けになった術式です。人工心肺は心臓を止めて心臓を修復するときなどに心臓や肺の代わりの働きをする装置です。冠動脈周囲だけを器具(スタビライザー)で動かないように固定してグラフトを縫い付けます。心臓の裏側にある冠動脈にも図2のように他のスタビライザーと組み合わせ心臓を持ち上げて行います。

図2

左右の内胸動脈だけでなく、胃の動脈もグラフトとして利用し長期に安定したバイパス血流を維持します。また、1本の静脈グラフトで数カ所の冠動脈吻合を行い、血流量増加、グラフト節約や動脈硬化の強い大動脈への吻合を少なくし合併症を減らすようにしています。人工心肺を用い心臓を止めて行う冠動脈バイパス術に比べ高い技術を要しますが、動脈硬化が強い高齢者や肝臓・腎臓に機能障害がある患者さんでは心停止・人工心肺によるストレスを回避することで脳梗塞や出血などの合併症を抑制し術後回復を早めます。合併症がなければ術後2週間ほどで退院が可能です。

(2)小切開による弁膜症手術(MICS(ミックス)手術)

心臓にある弁の機能に障害が生じた状態を「心臓弁膜症」といい、2つのタイプがあります。『狭窄』は弁の開きが悪くなって血液の流れが妨げられる状態です。『閉鎖不全』は弁の閉じ具合が悪く血液が逆流する状態です。自然に治る事はなく進行とともに心臓の負担から心不全を発症します。近年の高齢化社会において加齢に伴う弁変性による心臓弁膜症が増えており、疲労感、息切れや動悸(ドキドキ)などの自覚症状が年齢(トシ)のせいではなく弁膜症が原因であることがしばしば認められます。重症化する前に診断治療が重要です。

図3

図4

一般的に行われる弁膜症手術では胸の真ん中にある胸骨を縦に切る『胸骨正中切開』で行いますが、胸骨は全く切らずに5~10cm程の傷で助骨の間から手術を行う『右肋間開胸』など侵襲性の低い手術を『MICS(ミックス);Minimally Invasive Cardiac Surgery 低侵襲心臓外科手術』といいます。

図5

切開部分が小さいため、内視鏡を用いて視野を確保し特殊な器具を使用するために従来方法より手術時間が長くなりますが、出血や痛みが少ない、細菌感染のリスクが減少するなどの利点があります。胸骨を切らないため、術後早期から積極的なリハビリが可能で早期の退院や社会復帰が望めます。ただし、患者さんの病状によってはMICSが行えない場合もあります。
僧帽弁膜症では、適応があればMICSに併用し弁形成術も同時に実施いたします。弁形成術の最大の利点は、治療後に血液を固まりにくくするワーファリンを長期間服用する必要がないことです。一方、欠点は弁形成術では高い技術を持ってしても術後逆流が許容レベルで残存する場合もあります。さらに一定の確率(10年間で約10%)で逆流が再発増悪し再手術が必要になることがあります。それにも関わらず人工弁置換術による心機能低下や血栓症予防のためのワーファリン内服による脳出血や脳梗塞などの合併リスクを考えるとはるかにメリットが大きいでしょう。

図6

(3)ステントグラフト手術

大動脈瘤とは心臓から全身に血液を送る大動脈の血管壁が弱くなり正常サイズの1.5倍以上に膨らんで瘤状になる病気です。動脈硬化や感染・炎症などが原因と考えられます。急に大きくなったりある程度の大きさを超えた場合、あるいは小さくても形が悪い場合には破裂して大出血から死にいたる危険な病気です。症状がないことがほとんどで、破裂により初めて大動脈瘤がわかることも少なくありません。そのため“サイレントキラー”とも呼ばれます。

図7

動脈瘤を人工血管に置き換える『人工血管置換術』が従来では第一選択の治療法でしたが、高齢者や他に疾患を持つ患者さんにとって非常に侵襲の大きい手術のため術後合併症等による長期入院が問題となります。当院では『ステントグラフト手術( ステントグラフト内挿術)』に積極的に取り組むことでハイリスクの患者さんにおいても早い術後回復から入院も1週間程度となっています。
手術は全身麻酔下で足の付け根の血管(動脈)からカテーテルとともに細く畳んだステントグラフトを挿入して、大動脈瘤の部分まで送り込みます。瘤のある部位でグラフトを開き内側から瘤を隔離固定します。瘤を切除するのではなく瘤壁に接触する血流をなくすことで破裂のリスクを取り除くことができます。

図8

また、人工血管置換術とステント手術の組み合わせにより高い治療効果と低侵襲を両立させる工夫もしています。

図9

(4)下肢静脈瘤レーザー手術・グルー手術

下肢静脈瘤は、皮膚表面の静脈(表在静脈)の弁が壊れ血液の逆流し、うっ滞(血流が停滞)が生じるため静脈が太く膨らんで蛇行してコブ(瘤)状などに変化した状態です。妊娠、長時間の立ち仕事、加齢、遺伝、肥満が主な原因であり女性に多く(男性の3倍程度)、40歳以上の出産経験のある女性の半数に認められます。

図10

症状は、(1) 立つとより目立つ血管の拡張蛇行、(2) 怠さ、痒み、むくみ、(3) 寝ている時のこむら返り、(4) ふくらはぎの熱感や鈍重感、(5) くるぶし近くの皮膚が茶色~黒褐色に変色、(6) 皮膚のただれや潰瘍の発生などで、(1) から (6) へ進行しますが (2)(3)(4) は順不同で同時発生も少なくありません。
当科では伏在静脈瘤(図10参照)では『痛みの少ない日帰り手術』として保険適応であるレーザー手術(血管内レーザー焼灼術)とグルー手術(血管内塞栓術)の2種類の治療法をご提供しています。
レーザー手術は、直径1.5mmのレーザーファイバーを静脈の中に挿入しレーザー照射で発生する熱で血管壁を変化させて静脈を閉塞させ、血液の逆流を無くします。手術時間は1本の静脈治療で15~30分程度です。従来から行われている静脈抜去術(ストリッピング術)に比べ出血や痛みなど合併症がはるかに少ない治療です。焼灼する静脈周囲全域に局所麻酔が必要ですが、手術直後から普通に歩くことができ、デスクワークであれば翌日から可能です。
グルー手術は2019年から保険適応となったばかりの治療で、グルー(生体用瞬間接着剤)を細いカテーテルを用いて静脈内に注入して塞いでしまう治療です。レーザー手術に比べ広範囲の局所麻酔は不要で治療後に運動や生活の制限がほとんどありません。治療成績もレーザー治療と同程度と報告されています。夢のような治療ですが、接着剤によるアレルギー反応が起こることがあります。

図11

図12

潰瘍を形成し治療が難しい重症下肢静脈瘤ではSEPS(内視鏡下筋膜下穿通枝切離術)による治療を行い良好な成績を認めています。下肢静脈瘤は生命に関わる病気ではありませんが、確実に日常生活に支障をきたします。特に高齢者では認知機能にも悪影響を与えかねませんので、症状があるようでしたらリハビリ不要な日帰り治療が可能ですので積極的な治療をお勧めいたします。

(その他の診療における特徴)

その他に当科の診療特徴の一つとして成人先天性心疾患(15歳以上の患者さんで生まれつきの心臓疾患が未治療あるいは治療が終了していない状態)においても小児心臓外科の豊富な経験に基づく積極的治療が可能です。複雑な病態が多くより専門性の高い治療となります。
  • 心臓の壁などに穴が開いている病気(心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存症など)
  • 大きな動脈や静脈の病気(大動脈縮窄、肺動脈狭窄、部分肺静脈還流異常など)
  • 冠動脈の病気(川崎病による冠動脈瘤など)

診療実績・研究業績

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