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診療科・部門

劇症肝炎


1 疾患について

 劇症肝炎とは急性肝炎が急速に悪化して肝細胞が急激に壊れることで、重度の肝障害、肝機能低下、黄疸、意識障害(肝性脳症)などが起こる疾患です。わが国では「初発症状出現から8週以内にプロトロンビン時間が40%以下に低下し、昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を生じる肝炎」と定義されています。意識障害(肝性脳症)が出現する日数で、2つの型に分かれます。10日以内に現れる急性型と、11~56日以内に現れる亜急性型で、亜急性型のほうが予後が悪いです。劇症肝炎では肝細胞の急激な破壊によって再生が追いつかないため、適切な治療を行わないと致命的になることが少なくありません。急性肝炎から劇症肝炎に進展する頻度は約1%で、日本における劇症肝炎の患者さんは年間400人程度と推定されています。また、劇症肝炎は新生児から高齢者まで、男女関係なくあらゆる年齢層に起こります。

2 原因や症状

 劇症肝炎の原因にはウイルス性、薬物性、自己免疫性などがあり、原因が特定できない場合もすくなからずあります(成因不明例:約30%)。なぜ急性肝炎の一部の人が劇症肝炎に進展するかについては、いまだ十分に解明されていません。劇症肝炎の特徴的症状は肝性脳症を除くと特徴的な症状はなく、急性肝炎と同様に消化器症状(悪心、嘔吐、食思不振、心窩部不快感など)、発熱、全身倦怠感などがあります。一般に急性肝炎では黄疸が出現すると症状は軽快することが多いですが、劇症肝炎では黄疸が持続し、しかも高度になることが多いです。

3 治療法

 劇症肝炎では原因に対する治療と、肝臓を守るための治療の2つが重要です。
 原因に対する治療では、ウィルス性の治療では抗ウイルス療法などを行うのが一般的です。薬物性や自己免疫性では副腎ステロイド薬を点滴で短期的に大量投与します。
 肝臓を守るための治療では、体外に血液を循環させて(血漿交換療法や血液透析療法など)、体に必要な物質を補充し有害物質を除去します。その理由は肝臓の機能が低下すると体に必要な物質が十分に合成されず、有害物質を解毒できなくなってしまうためです。劇症肝炎では高い頻度で全身の臓器に障害が起こることから、全身管理や合併症に対する治療も重要です。
 このような治療を行っても肝機能が回復しない場合には、肝移植を検討します。
当院消化器内科では日本肝臓学会認定指導医が2名、専門医が4名在籍し、ICU管理下での劇症肝炎の治療が可能です。肝移植は当院では行っておりませんので、当該施設と相談いたします。