重症急性膵炎
1 疾患について
重症急性膵炎は急性膵炎(膵臓の急性炎症)の中でも、炎症の程度が高度なために膵臓自体や周囲の脂肪組織に出血や壊死をおこし、その炎症が全身に波及して肺/腎臓/肝臓などの重要臓器に障害をおこす疾患です。さらに膵膿瘍等の重篤な感染症を合併することから、致命率の高い疾患です(以前は30%の致死率)。重症急性膵炎の成因頻度は1位がアルコール性、2位が特発性(原因不明)、3位が胆石性です。重症急性膵炎の診断は各種症状、採血結果、CT画像を総合的に判断して診断します(急性膵炎ガイドラインに提示されている基準)。
2 診断基準や症状
急性膵炎の診断基準は①上腹部に急性腹痛発作と圧痛、②血中または尿中の膵酵素上昇、③超音波、CT または MRI で膵に急性膵炎に伴う異常所見の 3 項目中 2項目以上を満たすことと定義されています。急性膵炎の全国調査結果における代表的な症状は腹痛(92%)、嘔吐(27%)、背部痛(17%)でしたが、いずれの症状も急性膵炎にのみ特異的なものではないため、他の疾患(胃・十二指腸潰瘍、消化管穿孔、急性胆嚢炎、腸閉塞、腸間膜動脈閉塞症や急性大動脈解離など)を鑑別することも必要です。実際には、食後や飲酒後にみぞおちや背部に突然の激痛を感じることが多く、体をまっすぐに保つよりも上半身を前屈みにしてうずくまるような姿勢が楽になります。さらに重症膵炎では血圧低下のために冷や汗やめまいなどの症状が出現し、脈も早くなりショック状態に陥り、意識が低下するなど生命に関わる症状も出てきます。原因が胆石性の膵炎では尿の色が濃くなって茶褐色の尿が出ます。これは胆石が十二指腸の乳頭部に詰まって胆汁が出なくなり、黄疸の症状が出るためです。
3 治療法
重症急性膵炎では非常に多くの体内の水分が失われ高度の脱水状態となるため、大量点滴により十分な水分を補います。また、治療早期より痛みを取り除くことが不可欠のため、まずは非ステロイド性消炎鎮痛薬、非麻薬性鎮痛剤を使用しますが、必要に応じてより強力な麻薬性鎮痛剤も考慮します。
原因が胆石性の場合は早期に内視鏡を用いて膵液の流出路に詰まっている胆石を取り除きます。また、重症急性膵炎では経口からの飲食は中止し(絶飲食)、鼻から胃や十二指腸へ細い管を入れて栄養剤を投与します(腸管からの細菌感染を防ぐため目的もあります)。
入院当初は軽症な急性膵炎と診断され適切な治療を行っても、重症膵炎に移行してしまうこともあるため、軽症であっても慎重に経過を追っていくことが必要です。重症急性膵炎では上記のように高度炎症で体の重要な臓器機能がダメージを受けているため、集中治療室(ICU)で全身重症管理が必要となる場合もあります。血圧低下のため昇圧剤を投与したり、急性腎不全のため血液透析が必要となったり、急性呼吸不全では人工呼吸器を装着することもあります。
重症急性膵炎では極期状態から改善しても、その後に様々な合併症(後期合併症と呼称)が起こります。膵臓や膵周囲の脂肪が壊死し膿の溜まりができてしまう状況を被包化壊死(WON)、その感染から全身敗血症を来したり、膵臓近くの血管が破綻して大量出血したりと、ときに命を落とすことがある危険な合併症です。特にWONに感染を引き起こした場合は、高難度治療である超音波内視鏡による壊死除去術が必要が出てくることがあります。
原因が胆石性の場合は早期に内視鏡を用いて膵液の流出路に詰まっている胆石を取り除きます。また、重症急性膵炎では経口からの飲食は中止し(絶飲食)、鼻から胃や十二指腸へ細い管を入れて栄養剤を投与します(腸管からの細菌感染を防ぐため目的もあります)。
入院当初は軽症な急性膵炎と診断され適切な治療を行っても、重症膵炎に移行してしまうこともあるため、軽症であっても慎重に経過を追っていくことが必要です。重症急性膵炎では上記のように高度炎症で体の重要な臓器機能がダメージを受けているため、集中治療室(ICU)で全身重症管理が必要となる場合もあります。血圧低下のため昇圧剤を投与したり、急性腎不全のため血液透析が必要となったり、急性呼吸不全では人工呼吸器を装着することもあります。
重症急性膵炎では極期状態から改善しても、その後に様々な合併症(後期合併症と呼称)が起こります。膵臓や膵周囲の脂肪が壊死し膿の溜まりができてしまう状況を被包化壊死(WON)、その感染から全身敗血症を来したり、膵臓近くの血管が破綻して大量出血したりと、ときに命を落とすことがある危険な合併症です。特にWONに感染を引き起こした場合は、高難度治療である超音波内視鏡による壊死除去術が必要が出てくることがあります。
当院消化器内科では日本膵臓学会認定指導医が3名在籍し、ICU管理下での重症急性膵炎の治療が可能です。また、上記に記載した高難度治療である超音波内視鏡による壊死除去術はライセンスが必要な内視鏡治療で、科内にライセンス保有者が2名在籍しておりますので施行可能です。