病理診断科
診療科のご案内
病理診断科では病気の診断に欠かせない病理診断を行っています。胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がんの検査を受けられたことがありますか?あるいは血液検査やレントゲン検査の結果が怪しいので組織検査をしましょうと言われたことはありませんか?そんな時にからだの組織や細胞を一部採ってきて加工し、それを顕微鏡で観察して診断をするのが病理診断科の仕事です。そして、この仕事、病理診断を専門で行う医師が病理医です。
特長
病理診断科は、医療の基盤を支える部門であり、近年では質の高い医療を提供する病院の要件の一つとして、一般社会にも広く認識されるようになってきました。当科は、病理専門医1名、臨床検査技師4名(全員細胞検査士)体制で、病理組織診断、細胞診断、術中迅速病理診断、病理解剖および臨床病理検討会(CPC, clinic-pathological conference)を主に担っており、日本病理学会の認定施設として登録されています。2023年度の診療実績は、病理組織診断約4,874件、細胞診断は約3,349件と、各臨床科より多くのご依頼を頂いております。また、連携機関の先生方からの紹介患者さんの病理組織標本を、他院標本診断として診断させていただく機会も多くございます。デジタルスライドスキャナ、バーチャルスライドを用いたデジタル画像診断システムの構築や、遠隔病理コンサルテーションにも積極的に取り組んでおります。
主な疾患・治療法
近年、ゲノム科学(ゲノミクス、プロテオミクス等のオミクス解析)の飛躍的な進歩に伴い、様々な疾患、特に腫瘍性疾患で重要な働きをする遺伝子群、遺伝子変異が次々と同定され、遺伝子異常に準拠した疾患の再(細)分類が急速に進んでおります。病理診断科は、従来のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本のヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色による形態観察のみならず、これら遺伝子の異常発現や、遺伝子変異をコンパニオン診断として検討することにより、疾患の確定診断や、分子標的治療薬適応の決定にも重要な役割を担っております。今後も、新たな疾患概念の確立や治療薬の開発とともに、病理診断業務は複雑化の一途をたどることが予測されます。連携機関の先生方のご期待に沿えるよう、全力で精度の高い病理診断に取り組んでいくとともに、最新の診断法、検査法を速やかに導入し、最先端の医療を患者さんに受けていただけるよう、病理診断科チームとして一丸で取り組んで参る所存です。
病理診断科の仕事は以下のようなものがあります。
生検組織診断
治療方針を決めるために、胃や大腸など色々な臓器から、病変の一部を採取し、それを標本にします。採取された病変の一部を生検材料といい、その材料から作成した標本で診断を行うことを、生検組織診断とよびます。胃や肺などに内視鏡検査を行うことで病変を採取したり、乳房にできたしこりやリンパ腺の腫れに対して注射針などを用いて病変を採取します。採取した標本は、病理検査技師により顕微鏡で観察できる組織標本となります。
手術で摘出された臓器・組織の診断
摘出された臓器・組織は、病理医が肉眼で病変の部位、大きさ、広がりなどを確認し、診断に必要な部分を切り取り標本材料にします。これを病理検査技師が標本にします。この標本を病理医が観察し、どのような病変がどのくらい進行しているか、手術で取り切れているのかなど、治療方針決定に役立つ情報を臨床医に提供します。
手術中の迅速診断
手術前に、病変が存在する場所の関係などで生検が行えない場合には、手術中の病理診断で治療方針を決定する場合があります。また、手術中に病変が取り切れているかを確認する必要がある症例があります。その場合には、組織を特殊な方法で直ちに標本にし、20分程度で病理診断を行います。この診断は手術中の治療方針決定に大きく役立ちます。このような診断を術中迅速診断といい、普段少なくとも1日以上かかる病理組織標本作製を上記のように短時間で行えます。一方で、標本の質は普段よりも低くなる傾向があるという欠点も存在します。
細胞診断
肺がんや膀胱がんでは、がん細胞が剥がれて、痰や尿に混じることがあります。そこで、痰や尿を顕微鏡で調べることで、がん細胞がいるかどうかを判断できます。この行為を細胞診断と言います。そのほか、子宮がん検診では子宮頚部から細胞をこすりとって、乳房・甲状腺などのしこりには針を刺して細胞を吸引して調べます。
病理解剖
御遺族の承諾のもとに、病死された患者さんの御遺体を解剖させていただくのが、病理解剖です。生前の診断は正しかったのか、どのくらい病気が進行していたのか、適切な治療がなされていたのか、治療効果はどれくらいあったのか、死因は何か、といったことを判断します。病理解剖結果の蓄積により、今後の医療に役立たせてまいります。
#CPC(臨床病理検討会)
病理解剖された症例について、患者さんの診療に当たっている臨床医と、病理診断を行う病理医が集まり検討会を行います。この検討会をCPCといい、多数の臨床科から医師が参加し討論することで、今後の医療向上に大きな役割を果たしていると考えています。また、初期臨床研修ではCPCへの参加とCPCレポートの作成が必修項目となっています。
病理解剖された症例について、患者さんの診療に当たっている臨床医と、病理診断を行う病理医が集まり検討会を行います。この検討会をCPCといい、多数の臨床科から医師が参加し討論することで、今後の医療向上に大きな役割を果たしていると考えています。また、初期臨床研修ではCPCへの参加とCPCレポートの作成が必修項目となっています。
病理診断は主治医に報告され、治療に生かされます。病院に病理医がいることは、より良質の医療を提供することにつながります。