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当院について

2023年


名古屋市立大学医学部附属東部医療センターでは、名古屋市千種区内の中日新聞に折り込まれている「千種ホームニュース」に「紙上市民健康講座」を連載しています。
このページでは、過去の掲載分を紹介しています。
なお、記事の内容、肩書等は掲載時のものです。

身体の治療にはこころの健康が大事(2023年12月掲載)

現代社会には数多くのストレスがあり、誰でもこころの不調を経験することがあります。その中でも身体の病気によるストレスがきっかけとなり、こころの不調を伴う場合があり、それが身体の病気の治療に影響することがあります。
当院では総合病院の精神科としてコンサルテーション・リエゾン精神医療に重点を置いて治療を行っています。 リエゾンとはフランス語で「連携」という意味で、コンサルテーション・リエゾン精神医療とは「身体の診療科と協力して患者さんのこころの診療にあたる精神科の専門領域」のことです。主なものとしては、不安や不眠、抑うつ、せん妄(意識障害)といった症状があります。
当院では多職種からなる専門チーム(医師、看護師、心理士、社会福祉士、薬剤師、作業療法士、栄養士など)を作り、治療にあたっています。専門チームでは認知症を抱えた患者さんにケアや治療を行ったり、がん患者さんやご家族への治療相談や心理相談を行っています。このように私達は、患者さんのこころの健康を保ちながら身体の治療がスムーズに進むようにサポートしています。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター 
精神科 教授 診療科部長/音羽 健司

薬剤師の力で、さらに良いがん治療を(2023年10月掲載)

病気の治療に欠かせない薬、その専門家が薬剤師です。今回は、がん薬物療法(抗がん剤治療)における薬剤師の取り組みをご紹介します。
がん薬物療法の進歩は目覚ましく、新しいタイプの抗がん剤の登場により治療成績が大きく向上しています。また、日常生活を維持しながら通院治療できるのも、がん薬物療法の特徴です。しかし、副作用は依然大きな課題です。いかに優れた薬でも副作用で治療が続けられなければ効果は得られません。したがって、通院治療では患者さん自身で副作用の兆候を見逃さないことが大変重要です。
当院では、がん専門の「薬剤師外来」があり、副作用の対処法などを患者さんに指導しています。また、患者さんの副作用の原因を分析し、対策となる処方を医師へ提案するほか、院外薬局と連携して患者さんの症状をフォローする新しい取り組みも始めました。私達は、薬剤師の力で、さらに良いがん治療を目指しています。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター 
教授 薬剤部長/近藤 勝弘


かけがえのない日々を大切に生きるために~慢性腎臓病をご存じですか?~(2023年8月掲載)

近年慢性腎臓病(以下、CKD)という言葉を耳にしたことがある方が増えてきているのではないでしょうか。
CKDとは腎障害や腎機能低下が続くことで、生活習慣の変化・高齢化を背景に増加しており、脳卒中、心臓病、認知機能障害などとも関係するため、国民の健康寿命を損なう要因として「国民病」とも言われています。CKDが末期に至ると透析療法や腎移植が必要となる場合があります。2006年頃よりCKD啓蒙活動が始まり、CKDと関連のある糖尿病や高血圧、心不全治療の進歩に加え、早期発見、適切な治療により、透析の回避や先送り、健康寿命の延伸が可能であることが証明されてきました。CKD診療は早期受診・早期治療による重症化予防と、医師、看護師、栄養士、薬剤師などの多職種によるチーム医療が重要です。
腎臓を護ることは命を守ることです。あなたの腎臓に興味を向けてあげてください。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
腎臓内科 准教授 血液浄化療法センター長/小池 清美

大動脈解離について(2023年6月掲載)

皆さんは大動脈解離という病気をご存知でしょうか?
心臓から出る一番大きな血管を大動脈といいます。全身に血液を送る大事な通り道です。
大動脈は三層構造になっています。最も内側の層が裂けると大動脈解離をひきおこします。三層構造が壊れて大動脈の壁が薄くなり、破裂しやすい状況になります。
特に心臓に近い部分が裂けると1時間に1%ずつ死亡率が上昇すると言われています。薬を使って治療するだけでは救命が難しいので手術を行います。
また、大動脈から出る枝の血管が裂けるとその先にある臓器に重大な影響を与えます。
頭の血管であれば脳梗塞、腸管を栄養する血管であれば腸管壊死、腎臓の血管であれば腎不全、足の血管であれば下肢虚血を起こします。
大動脈解離は激烈な胸の痛みや背中の痛みで発症することが多いです。
当院では大動脈解離の患者さんを積極的に受け入れ、麻酔科、手術室、臨床工学室、集中治療室のスタッフと共に治療を行っています。気になる症状があれば早めにご相談ください。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
心臓血管外科 准教授 診療科部長/佐々木 英樹


膵がんの診断法(2023年4月掲載)

日本のがん統計で膵がんの年間死者数は第4番目です。米国では今後10年以内に膵がんは第2番目になると試算され、この傾向は日本でも同様と想像されています。
また、膵がん全体の5年生存率は10%未満で、予後不良ながんとして知られています。
その主な原因は早期診断が困難であることです。今回は膵がんの早期診断法を紹介します。
膵がん診断のアルゴリズム(具体的な手順)がガイドラインで示されており、膵がんを疑う場合は最初に腫瘍(がん)マーカーの採血検査や腹部超音波(エコー)検査を行います。追加検査で、CT・MRI・超音波内視鏡(以下EUS:Endoscopic Ultrasonography)などの検査を行います。
今回はEUSについてお話しします。EUSは内視鏡(胃カメラ)の先端に超音波装置がある特殊な内視鏡です。膵臓は胃の背中側に存在するため、内視鏡先端にある超音波装置で胃の背側の膵臓を詳細に観察します。
EUSよる膵がんの診断能は93%以上と報告され、膵がんの早期診断には最も有用です。当院もEUSが導入され、年間250件ほど施行しております。
膵がんは予後不良といわれておりますが、大きさ1cm以下の膵がんの5年生存率は80%以上と報告されています。EUSによって膵がんの早期発見されることを期待して稿を終わります。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
消化器内科 教授 診療科部長/林 香月

糖尿病と診断されたら(2023年2月掲載)

糖尿病の合併症のひとつである、糖尿病網膜症は、日本における失明原因の第3位の疾患で、特に働き盛りの世代に多いことが問題です。
糖尿病網膜症を発症しても、視力はそのままで、自覚症状なく進行するため、定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けることがとても大切です。また、糖尿病網膜症の程度は、造影剤を点滴する蛍光眼底造影で検査していましたが、造影剤を使用せず網膜の毛細血管が撮影できる技術も最近登場し、糖尿病網膜症の早期発見ができるようになりました。
血糖が落ち着いているから、網膜症も大丈夫、と思う患者さんもいらっしゃいますが、糖尿病になっている期間(罹病期間)が長くなると、糖尿病網膜症を発症し悪化します。日本人の成人6人に1人が、糖尿病もしくは糖尿病予備軍の現在、決して他人事ではありません。糖尿病網膜症を早期に発見することが、失明の防止に重要ですので、糖尿病と診断されましたら、すぐに眼科受診することをおすすめします。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
眼科 教授 診療科部長/野崎 実穂