グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



当院について

2022年


名古屋市立大学医学部附属東部医療センターでは、名古屋市千種区内の中日新聞に折り込まれている「千種ホームニュース」に「紙上市民健康講座」を連載しています。
このページでは、過去の掲載分を紹介しています。
なお、記事の内容、肩書等は掲載時のものです。

交通事故から命を守る運転中の体調不良を防ぐために注意すること(2022年12月掲載)

この夏、運転中の運転手の体調不良が原因ではないかと思われる重大事故がありました。運転中の発症で死亡事故につながるのは、心疾患や脳疾患、大動脈疾患ですが、この他にも発熱などで体調が悪い時には、運転に必要な集中力や判断力が低下し、反射が鈍くなるため運転を見合わせることが重要です。さらに、睡眠導入剤やいわゆる安定剤と呼ばれる薬剤、市販のかぜ薬は眠くなる成分が含まれており、服用後、半日程度は車の運転は禁止されます。特に高齢者の場合は、肝機能や腎機能が低下して薬の効果が残りやすくなりますので、眠気が残る場合は運転を控えて下さい。血圧を下げる降圧剤や前立腺肥大のお薬についても、朝食後に内服した後、血圧が下がりすぎてめまいがしたり、立ちくらみから意識を失う場合もあります。このような症状を自覚された場合は、特に午前中の運転は避け、主治医に相談してみて下さい。糖尿病の治療で使用する血糖降下剤とインスリンについても、服用や注射の後、食欲がなかったり、食事を摂る時間がなく十分な糖分を摂取できなかった場合には、1、2時間後に血糖値が異常に低下し、意識を失うことがあります。食事が十分に摂れない場合は、運転を控え、主治医に相談してお薬の量を調節する必要があります。
運転中の急な意識消失は重大な事故につながります。日頃の体調に気を付け、安全運転を続けましょう。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
救命救急センター長/松嶋 麻子

「骨転移による脊髄麻痺」について(2022年10月掲載)

がん救急は、がんの進行や治療に伴って発生し、緊急な治療を要する一群の病態です。早期診断・早期介入によって、予後やその後の生活の質を維持する事が可能となるため、がん救急は、がん診療における重要な役割を担っています。
がん救急の一つに「骨転移による脊髄麻痺」があります。脊髄とは脳から背骨の中を通って伸びている太い神経のようなものです。人間の体を動かす様々な指示は脳からこの脊髄を通って全身に伝わり、逆に手足などで感じた感覚は脊髄を通って脳に伝わります。脊髄麻痺が進行すると歩けなくなる、感覚がなくなる、排便・排尿ができなくなるなどの症状が出現します。
がんの治療において、放射線治療は、痛みをとる、麻痺を改善させるだけでなく、病気の縮小の効果も期待できます。早期の治療開始が症状の改善に重要であるため、気になる症状がありましたら、かかりつけの先生や私どもにご相談ください。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
放射線治療科 診療科部長/永井 愛子

スポーツにおける頭部外傷と脳振盪(しんとう)(2022年8月掲載)

日本神経外傷学会が行ったアンケート調査によると、入院したスポーツ関連頭部外傷で最も頻度が高かったのは、脳振盪でした。
脳振盪は、頭部が衝撃を受けた際に発現する神経の機能的な変化で、通常は受傷前の状態に回復するものです。一時的に意識が消失し、その後に意識が回復するものを連想されるかもしれませんが、意識が消失しない場合もあり注意が必要です。受傷後よりみられる頭痛や頭重感、めまいなども脳振盪の症状になります。直接頭部を打撲しなくても、体への強い衝撃により脳が強く揺れ動くことによっても起こり得ます。頭痛やめまい、集中力の低下などの症状があれば運動を中止し、症状がなくなるまでは静養をとることが重要です。繰り返し脳振盪を生じると重篤な神経障害が残る危険性も指摘されています。
大切なことは衝撃を受けた脳をしっかりと休めてあげることです。症状のある間は運動を控えるだけでなく、パソコン、ゲームやスマホの使用は控えて脳の回復を待ちましょう。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
脳神経外科 診療科部長/相原 徳孝

糖尿病と腎臓の話(2022年6月掲載)

糖尿病は慢性腎臓病の原因として大きなものの一つです。そして糖尿病による腎臓の病気に「タイプ」があることが、腎臓病領域で話題の一つになっています。これは古典的な糖尿病性腎症と呼ばれるものと、それ以外のものの2つに大きく分けられます。
古典的なものは段階的に尿中に排泄される蛋白質の量が増え、次第に進行して末期腎不全(透析が必要な状態)に至ります。このタイプは透析に至るまでのスピードがかなり速いです。もう一つのタイプは、何らかの形で糖尿病が悪影響をおよぼすものの、尿に蛋白質が多く排泄されず、最終的に透析に至る可能性のあるものです。後者の例として、肥満、脂質異常、高血圧症、動脈硬化によっても腎臓の障害は進みますが、これらも糖尿病と深い関係にあります。
糖尿病のある方は、尿中に蛋白質が多く出ていないとしても、十分注意して治療に取り組んでいただきたいと思います。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
血液浄化療法センター長/鈴木 大成

こどものけいれん(2022年4月掲載)

こどものけいれんは、熱性けいれんが一番多いです。熱性けいれんは日本人に多く、後遺症を残しません。定義は、1)生後6カ月から5歳までの乳幼児期におこる、2)発熱にともなう発作性疾患、3)髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因が見られないものとされています。ほとんどの場合は発熱後48時間以内に発症し、5分以内におさまります。血縁に熱性けいれんがいらっしゃることも多いです。
発熱がないときのけいれんでは、憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)や胃腸炎関連けいれん、てんかんの可能性を考えます。憤怒けいれんは、必ず泣いた後におこるもので顔色が悪くなって全身に力が入ってひきつけるものです。胃腸炎関連けいれんは、胃腸炎になったときにともなう短いけいれん発作です。憤怒けいれんも胃腸炎関連けいれんも後遺症は残しません。
てんかん発作は、その人によって違います。けいれん症状の人もいれば、意識障害だけの発作症状の人もいたり多様です。小児期に発症のてんかんは、治ることが多いです。気になる症状がありましたら、かかりつけの先生や私どもにご相談ください。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
小児科 診療科部長/服部 文子

日常生活の中のリハビリテーション(2022年2月掲載)

突然ですが、みなさんはリハビリテーションというとどの様なものを思い浮かべられますか?多くの方は「入院したらリハビリするんでしょ」とか、「膝が痛いからリハビリに通うか」とか、そういったイメージが強いのではないかと思います。
確かにそれはリハビリテーションの主要な側面の一つではありますが、究極的には「日常生活そのものがリハビリテーション」なのです。
入院中のリハビリテーションは苦手な日常生活動作を要素に分解し、その一つ一つをこなせる様にすることで、最終的には必要な動作が出来る様にすることを目指します。であれば、その日常生活動作自体をある程度こなすことが出来る様なら、それを繰り返すこと、すなわち生活を送ること自体がリハビリテーションになるのです。
どうしても訓練は反復が多く、単調に感じられることもあると思います。ですが、やりにくいことを人にお願いするのではなく、「少し自分で動いてみるか」と思うこと、そして実際に動いてみること、それ自体がリハビリテーションとなり、ひいてはご自身の生活を豊かにすることに繋がるのです。
もちろんできないことを無理にすることが正しいのではありません。「少し面倒だな」とか「頼んだ方が早い」とか、そう思えることを一つずつやってみて下さい。明日の動きやすさへの第一歩です。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
リハビリテーション科 診療科部長/青山 公紀