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当院について

2021年


名古屋市立大学医学部附属東部医療センターでは、千種ホームニュースに「紙上市民健康講座」を連載しています。
このページでは、過去の掲載分を紹介しています。
なお、記事の内容、肩書等は掲載時のものです。

気づかれにくいホルモンの病気(2021年12月掲載)

内分泌内科は、ホルモンの作用に異常が出る病気を担当する内科です。
ホルモンは血液中に分泌されてホルモンの受容体を持つ特定の細胞に作用します。ホルモンの分泌量が多すぎたり少なすぎたりすると、ホルモンの受容体を持つ細胞の調子が変わってしまい、体の不調を来たします。
内分泌内科が担当する病気の中で一番多いのは、「糖尿病」です。糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用が不足するために血糖値が高くなる病気です。次に多いのは甲状腺の病気です。甲状腺から出るホルモンが多くなる「バセドウ病」、少なくなる「橋本病」などがあります。また、高血圧の原因を調べた結果、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌されてしまう「原発性アルドステロン症」という病気が判明することもあります。
ホルモンの病気は気づかれにくいことも多いです。気になる方は、かかりつけの先生や私達に相談して下さい。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
内分泌内科 診療科部長/髙木 博史

“縁の下の力持ち” 放射線科診断医の役割(2021年10月掲載)

放射線科診断医の存在を御存知でしょうか。様々な理由で病院を受診された患者さんの多くが最初に受けられる検査の一つに画像検査があります。画像検査の中でもCT・MRI画像検査は短時間で様々な情報を得ることができる身近な、そして重要な診断ツールとなっています。放射線科診断医は行われた画像検査から多くの情報を収集し、画像上考えられる診断を担当医に迅速かつ正確に伝えるのが主な役割です。担当医と密接に連携して診療に携わっており、“ドクターズドクター”とも呼ばれる存在です。さらに画像診断医の中には画像検査から発達した血管内治療を得意とする医師もおり、出血病変、がんや動脈瘤などに対し、カテーテルを用いた体の負担の少ない治療も提供しています。
患者さんと直接お話する機会は少ないかもしれませんが、受診の際は“縁の下の力持ち”の放射線科診断医の存在をチェックしてみて下さい。
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
放射線診断科 診療科部長/橋爪 卓也

高齢・核家族化社会における熱中症対策(2021年8月掲載)

熱中症は高温多湿な環境における生体障害の総称で、ふらつき、めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉のこむら返り、頭痛、嘔気、食思不振、全身倦怠感などの多彩な症状で発症します。重症化すると、意識障害や臓器障害、凝固障害などが進行して死に至ることもあります。屋外での作業中だけでなく、室内で特に運動していない時でも熱中症となり得ますので注意して下さい。特に高齢者の場合、口渇を自覚する能力や暑熱環境での身体調節機能が低下しているため、食思不振や全身倦怠感から徐々に脱水・電解質異常が進行し、持病の悪化や感染症を併発しながら熱中症が重症化していきます。
熱中症に特化した治療法はなく、対症療法・支持療法を継続することしかできません。そのため、熱中症にならないように予防することが何よりも大切です。熱中症の予防は、(1)高温・多湿を避ける、(2)水分をこまめに補給することに集約されます。しかし、高齢者だけで生活されている世帯では、水分補給が自然と不足しがちとなる上に、冷房を嫌う方も多く、周囲の人が訪問した際にはじめて暑熱環境に陥っていることが判明する等、十分な予防ができていないことが少なくありません。
核家族化が進み、高齢の親族と離れて生活されている方も多いと思います。熱中症は予防が極めて重要であり、発症してしまった熱中症に対しては対症療法しか行えない事を認識して頂き、親族間で熱中症予防について話し合うきっかけとして頂ければ幸いです。
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
救急科 診療科部長/大出 靖将

匂わない、味がない、コロナかも!(2021年6月掲載)

新型コロナウイルス感染症は発熱や咳、のどの痛みなどが主な症状ですが、匂いや味が分からなくなるのも大きな特徴です。ウイルスが鼻の奥にある嗅細胞や舌の味蕾細胞に感染して破壊するために嗅覚・味覚障害が生じます。日本人より白人に多いと言われていますが、日本人でも約半数に嗅覚・味覚障害があることが分かってきました。そして、若い人に多く、発熱や咳、のどの痛みなどを伴わないことがあることも分かってきました。
新型コロナウイルスは咳やくしゃみなどの飛沫や接触により感染するため、マスクや手洗いをして感染を防止することが大切です。また、自分が感染した際には人に移さないことも大切です。毎日、体調をチェックし、風邪の症状がある場合は勿論、急に匂いや味が分からなくなった場合も感染を疑い、かかりつけ医など地域の医療機関や受診・相談センター(電話:052-249-3703(24時間体制))に電話相談しましょう。
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
高次ウイルス感染症センター長/村上 信五

鼠径(そけい)部ヘルニアについて(2021年4月掲載)

体内の臓器などが本来あるべき部位から脱出・突出した状態をヘルニアといいます。ヘルニアのなかで、太ももの付け根あたりで発生するものが鼠径部ヘルニアです。
症状は、鼠径部に出たり入ったりする膨らみを認めたり、痛みを感じることがあります。一般的に、自然治癒することはありません。放置すればだんだん大きくなり、男性は陰嚢(いんのう)まで膨らむこともあります。中には、腸がはまり込んで壊死してしまう場合もあります(嵌頓)。
鼠径部ヘルニアの治療は手術です。飛び出した臓器をおなかの中に戻し、メッシュ(人体に使用しても安全な化学繊維の網)を用いて臓器が飛び出さないようにする術式が一般的です。
従来は前方からの手術でしたが、近年は腹腔鏡手術で行うことも多くなってきました。手術の方法はそれぞれ一長一短がありますので、鼠径部に膨らみを自覚されたときは、お近くの外科を受診されることをお勧めします。

名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
消化器外科 診療科部長/原田 幸志朗

乳がんにまつわるあれこれ(2021年2月掲載)

乳がんに関する診療をしていると、患者さんや家族の方からよく聞かれる質問があります。
「歳をとるともう乳がんにならないと思っていた」乳がんは他のがんと比べると比較的若い方もいらっしゃいますが(好発年齢は40代~60代)、高齢化が進んでいることもあり、70~80代の人で診断、治療を受けられる方も近年増えています。
「高齢の人の方が若い人よりも進みが遅いよね?」乳がんと一言で言ってもいろいろなタイプがあるため、若い人の乳癌でゆっくりの人もいれば、逆に高齢の方でも進行が早い人もいます。
「乳がんと診断されたら、もうだめかと思っていた」乳がんでもステージIであれば10年生存率は9割以上です。適切な治療を受けることで元気に過ごしておられる方はたくさんいます。
乳がんは自分でチェックできる数少ないがんです。月1回乳房の自己検診をしたり、1~2年に1回乳がん検診を受けたり、ぜひ自分のお胸に興味を持ってあげてください。
名古屋市立東部医療センター
乳腺・内分泌外科部長/三田 圭子