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当院について

2019年


名古屋市立大学医学部附属東部医療センターでは、千種ホームニュースに「紙上市民健康講座」を連載しています。
このページでは、過去の掲載分を紹介しています。
なお、記事の内容、肩書等は掲載時のものです。

子宮頸がん検診を受けましょう(2019年11月掲載)

我々が通常子宮がんと呼んでいる病気には子宮頸部に発生する子宮頸がんと、子宮内膜に発生する子宮体がん(別名子宮内膜がん)の2つがあります。みなさまが受けている子宮がん検診は通常子宮頸がんのことを指しますが、わが国の受診率は30%に満たないのが現状です(欧米では80%以上)。
子宮頸がんは毎年約10000人の女性が罹患し、特に20-30歳代の若年層に増えているため早期発見がとても重要ながんの一つです。さらに子宮頸がんは性行為で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が関連することが分かっており、最近ではHPV感染の有無や癌化リスクの高いウイルスの型まで同定することが可能になりました。
子宮頸がん検診では子宮頸部から直接細胞を採取する必要があります。婦人科診察・検査等に対する不安や心配もあるかと思いますが、1回の検診にかかる時間は概ね5-10分程度です。20歳代以降の女性の方は、少なくとも2年に1回、出来れば毎年子宮頸がん検診を受けていただくことをお勧めします。
名古屋市立東部医療センター
第一産婦人科部長/小島 和寿

大動脈瘤のおはなし(2019年10月掲載)

大動脈は、心臓から送り出された血液が通る太い血管です。その大動脈が正常の血管径の1.5倍以上拡大したもの、もしくはお餅が膨らんだように拡大したものを大動脈瘤と呼びます。大動脈瘤は、破裂するまで症状が無いことが多く、動脈瘤によって引き起こされる症状は、破裂の危険性が高まっている状態です。瘤が破裂した場合、体内で大出血が起こり救命することが困難になります。欧米では症状もなく生命の危機が忍び寄る怖い病気であるため、大動脈瘤は「サイレントキラー」とも表現されます。
大動脈瘤も、脳梗塞や心筋梗塞と同様に動脈硬化が危険因子であり、発症予防には禁煙・降圧などが重要です。また、診断は身体診察で発見することが難しく、レントゲン、腹部エコーやCTで発見されることが多い病気です。
そのため、大動脈瘤破裂を防ぐには、生活習慣の改善と、定期的な健康診断が重要になってきます。

名古屋市立東部医療センター
第三心臓血管外科部長/神谷 信次

胃がんについて(2019年9月掲載)

がんの部位別死亡率で長らく第一位であった胃がんも肺がんや大腸がんの増加に伴い、第三位となっています。
胃がんの5年生存率は全ステージを合わせると70%近くになっており、今や決して治らない病気ではありません。
胃がんの治療は超早期を除けば手術が原則ですが、最近ではからだの負担が少ない腹腔鏡手術にて切除可能な場合があります。腹腔鏡下胃切除術ではおへそから細い高性能カメラを挿入し、おなかの中をモニターで映し出します。そして1cm前後の小孔を4か所程度あけて、モニターを見ながら鉗子と呼ばれる手術用の細い器具を操作して胃や周囲のリンパ節の切除を行います
腹腔鏡手術では傷が小さくてすむことや、術後の痛みが少ないことなどの理由で術後の回復が早いと言われています。
全ての胃がんで内視鏡手術が可能ではありませんが、可能な限り安全かつからだに優しい手術を心がけています。

名古屋市立東部医療センター
第二消化器外科部長/堅田 武保

放射線科医(画像診断医)の役割とは(2019年8月掲載)

放射線科医が病院でどんな役割をしているのか、御存知の方は多くないかもしれません。
我が国はCT・MRI装置の普及率が群を抜いて世界一であり、CT・MRI画像検査は身近な、そして重要な診断ツールの1つとなっています。
行われた画像検査からより多くの情報を収集し、得られた情報の中で重要なものをピックアップして考察を加え、患者さんの担当医に迅速かつ正確に伝えるのが、主な役割です。それぞれの診療科の専門領域にとどまらず、身体の画像情報を通して横断的に診ることできるという利点もあります。
患者さんと直接お話する機会はあまりないのですが、担当医と密接に連携して診療に携わっており、“ドクターズドクター”とも呼ばれる存在です。
かかりつけの医師により画像検査が必要だと判断された際は、放射線科医が在籍している病院で精度の高い画像検査を受けられるとよろしいでしょう。

名古屋市立東部医療センター
第二放射線科部長/南光 寿美礼

過度な飲酒が引き起こす消化器の病気(2019年7月掲載)

適量の飲酒はストレスの緩和など健康にプラスに働くこともあると言われますが、頻繁に過度の飲酒を続けると、様々な病気の原因になります。
厚労省の健康日本21によると、適量とは1日平均純アルコールとして20gで、ビール500ml缶1本、日本酒1合(180ml)、ウイスキー60mlに相当します。
過度な飲酒は消化器系の癌(口腔癌、咽頭癌、食道癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌)、肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)、膵障害(急性膵炎、慢性膵炎)、消化管障害(食道炎、急性胃粘膜障害、胃十二指腸潰瘍)のリスクを高めます。
これらの病気のうち、腹痛で発症する膵炎や消化管障害もありますが、癌や肝障害は自覚症状もなく発病し進行していきます。病気を発見するには血液検査や胃カメラ、大腸カメラ、腹部エコー、CTなど検査を受ける必要があります。
日頃から飲酒は控え、少しでも体調の異変を感じたら消化器内科を受診して検査を受けるようお勧めします。

名古屋市立東部医療センター
第四消化器内科部長/田中 義人

糖尿病と眼(2019年6月掲載)

糖尿病では血液中を流れるブドウ糖が増えた状態が続いて血管が徐々に傷つきます。眼にも様々な影響が出ますが、このうち糖尿病網膜症では、眼の底の網膜という、カメラでいうとフィルムにあたる場所で、出血したり血管がつまったりします。進行すると網膜に新しい血管ができますが、この血管はとても破れやすく、大きな出血を生じたり、さらに進行すると網膜剥離を起こしたりすることもあります。網膜の中心部が腫れる場合もあり、見えにくくなります。
初期の治療は、血糖値のコントロールが重要で、眼科では進行していないか経過を観察します。病状がある程度進行してきたら病気の勢いをくい止めるためにレーザー治療を行いますが、手術が必要となることもあります。また、網膜の中心部が腫れた場合は腫れを引かせる薬を眼に注射します。
適切な治療のタイミングを逃さないために、糖尿病を診断されたら眼に自覚症状がなくても、定期的に眼科を受診しましょう。
名古屋市立東部医療センター
第二眼科部長/吉田 直子

関節リウマチの関節破壊を防ぐために(2019年5月掲載)

関節リウマチというのは、全身の関節に痛みや腫れといった症状がでて、時間の経過とともに関節を壊していく病気です。関節の滑膜が炎症を起こし、その炎症によって軟骨や骨の破壊が起きます。関節が変形すると様々な機能障害をきたすことにより、現在の生活を継続することが困難になります。しかし最近の抗リウマチ薬の進歩により、関節破壊をくいとめ、健康的な人とほぼ変わらない生活を送る患者さんが増えています。そのためには早期診断とできるだけ早くからの治療が不可欠です。強力な免疫抑制剤を使うこともあるため、安全に、合併症に注意しながら治療をすすめていく必要があります。そのためには治療に際して、患者さんとともに治療結果を評価し、必要があれば、さらなる治療強化、そして手術的治療の併用を考えます。
早期のリウマチは、診断基準を満たさず確定診断をつけることが困難な場合もあります。このような場合はリウマチ専門医にぜひご相談ください。
名古屋市立東部医療センター
リウマチセンター長/永谷 祐子

皮膚がんの話(2019年4月掲載)

皮膚がんは皮膚にできる悪性腫瘍で、高齢者に多いため、今後増加していくと予想されます。一般に日光に当たる顔面や四肢にできることが多いです。基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、乳房外パジェット病などが主な腫瘍で、治療の基本は切除手術になります。ただ、黒い腫瘍でも脂漏性角化症という老人性のいぼや、シミ、ほくろなどがありすべてが悪性というわけではありません。

皮膚科ではダーモスコピーという器械を用いて診断していきます。ただ、診断が難しい場合や悪性腫瘍の場合には皮膚に麻酔をして皮膚を一部切り取り、顕微鏡で調べる検査をすることもあります。早期に適切な診断、治療を受けることにより完治する皮膚がんも数多くあります。皮膚に気になる病変ができた場合は早期に皮膚科に受診することをお勧めします。

名古屋市立東部医療センター
皮膚科副部長/岩井 敦子

なぜ高血圧になるの?(2019年3月掲載)

皆さんはご自身の血圧がどのくらいか、ご存知でしょうか。病院や健診で測る場合、上の血圧が140、下の血圧が90以上あれば高血圧と診断されます。高血圧は脳卒中や心筋梗塞など循環器病の原因となるため、適切な血圧を保つことが重要です。

では、高血圧はなぜ起こるのでしょうか。腎臓の病気(慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など)や腎動脈の狭窄、ホルモン異常(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫など)、薬剤(非ステロイド性抗炎症薬、甘草など)、睡眠時無呼吸症候群などが原因となって高血圧をきたすものを二次性高血圧と呼びます。一方、原因が特定できないものを本態性高血圧と言い、血圧が上がりやすい素因に加え、運動不足、肥満、飲酒、塩分の摂りすぎなどが重なり中年期以降に発症します。
高血圧の原因を調べ、それに応じた治療を受けることが将来の循環器病予防につながります。血圧の気になる方は、ぜひ一度医療機関を受診しましょう。

名古屋市立東部医療センター
循環器内科特別診療科部長/山下 純世

膀胱癌の話(2019年2月掲載)

膀胱癌は、膀胱にできる悪性腫瘍です。男性の方が、女性の4倍の確率で発生すると報告されています。喫煙や有機溶媒に関する職業歴と、深い関係があると言われています。某情報番組の男性アナウンサーが、最近手術したことで注目を浴びています。
膀胱癌は、何も症状がないのに目で見て赤いおしっこが出て、みつかることが多いです(無症候性肉眼的血尿)。すぐに泌尿器科を受診すれば、多くの場合、初期で見つかり、内視鏡による手術で治療することが可能です。進行した状態であれば、膀胱を摘出する必要があります。その際は、膀胱がなくなってしまうため尿路変更が必要になります。一般的には、体力が十分ある方であれば、小腸を利用して新しい膀胱をつくることができます。しかし、高齢な患者さんも多く、その際は、お腹から尿を排出する方法をとります(尿路ストーマ)。
真っ赤なおしっこが出た時は、症状がないときこそ、すぐに泌尿器科を受診してください。
名古屋市立東部医療センター
第二泌尿器科部長/池上 要介

嚥下障害について(2019年1月掲載)

嚥下とは、モノを飲み込み、胃に送ることを表す言葉です。「嚥」という漢字が使われていますがこれは、ツバメの子が親鳥から餌をもらい飲み込む様子から作られました。口へんに燕(つばめ)と書いて「飲み込む」という意味の動詞になったのです。

私たちは普段、意識することなく食べ物を飲み込んでいますが、病気や老化などの理由で食べ物が飲み込みにくい状態になることがあります。このような状態を嚥下障害といいます。嚥下障害があると食事を摂りづらくなるため食べる楽しみが減ってしまいます。また、低栄養や脱水を起こす、窒息するといった危険や誤嚥性肺炎を引き起こす原因にもなります。それだけに嚥下障害に気づいたら早めに検査を受けたり、リハビリや口腔内の衛生に気をつけるなどの予防策を行うことが大切です。東部医療センターでは、入院・外来患者さんの「食べる」を支えるために嚥下障害に対して、検査やリハビリ(入院のみ)、相談を行っています。
名古屋市立東部医療センター
看護師/安藤 みゆき