グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ


オキサリプラチンの副作用に関する研究


ホーム > 喜谷記念がん治療センター > 医療情報 > オキサリプラチンの副作用に関する研究

オキサリプラチンの副作用、神経障害性疼痛に対して「加工ブシ」が有効

名古屋市立大学大学院薬学研究科生薬学分野 牧野 利明
神経薬理学分野 大澤 匡弘

オキサリプラチンは、進行再発大腸がんに対する標準的な治療薬ですが、副作用として、何かに触れるだけで、あるいは風に当たっただけで痛い、と、通常なら何も感じないような刺激に対して痛みを感じてしまうという神経障害性疼痛を高い頻度で発症します。この副作用のために、がんを叩く前に治療を断念するようなこともあります。そこで、オキサリプラチンを使うときには、この副作用を抑えることが重要となります。
「加工ブシ」は、ハナトリカブトまたはオクトリカブトの根を原料とする生薬です。トリカブトというと毒草として有名ですが、漢方医学ではその根を鎮痛、強心、利尿を目的に利用します。現在では、その減毒処理方法が確立し、医薬品として安全に使用できるようになった「加工ブシ」を、医師は西洋医学で使用する医薬品と同じように処方することが出来るようになっています。
私たちは、オキサリプラチンを投与したマウスで発症する神経障害性疼痛に対して、「加工ブシ」が有効であることを見いだしました。そして、その有効成分を探索したところ、これまで知られていた鎮痛活性成分(同時に毒性成分でもある)ではなく、ネオリンというまったく薬効が知られていなかったが見つかりました。
オキサリプラチンを使用する時には、「加工ブシ」と併用することで、その副作用を防ぐので、がんを叩く治療を長く行うことができる可能性があります。

図 マウスにオキサリプラチン(L-OHP)を投与した時に発症する神経障害性疼痛に対する加工ブシ(PA)の緩和作用。マウスにオキサリプラチンをday 0に腹腔内投与し、同時に加工ブシを含むエサで飼育しました。Vehicleは、加工ブシの代わりにデンプンを投与したものです。左のグラフは、「触っただけで痛い」に相当する試験で、値が低くなるほど痛みを感じやすくなっている状態に相当し、右のグラフはマウスの足の裏にアセトンという有機溶剤を滴下して、それが体温で気化するときに感じる冷たさを痛みとして感じるかどうか、という試験で、値が大きいほど痛みを感じやすくなっている状態となります。どちらの神経障害性疼痛に対しても、加工ブシは有効性を示しています。
Mean ± S.E. (n = 7). **p < 0.01 vs oxaliplatin group, ##p < 0.01 vs vehicle group by Bonferroni’s multiple t-test.