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東部医療センター広報誌「風の道」

風の道vol.37(2024年5月発行)


より良い医療を目指して ~東部改革~

今回の東部医療センター広報誌「風の道」は循環器内科の専門医としてご活躍されています連携医のちくさ病院 石黒太志副院長をお招きし、当院の循環器内科 和田診療科部長と対談していただきました。対談では、循環器内科医療の現状、当院との病診連携の在り方や当院での医療体制について意見交換をいたしました。

:ちくさ病院 石黒副院長
:当院循環器内科 和田診療科部長

和田
本日は宜しくお願い致します。循環器内科はあまりがんになじみのない診療科とされていました。腫瘍循環器学という分野が設置され、がんに伴った心筋障害や血栓症に取り組む形で、最近では循環器内科医もがん診療にかかわる傾向にあります。先生はちくさ病院で訪問診療をされていますが、そこに至る経緯やご経験というのはどういったものでしょうか?


石黒 
元々私は呼吸器外科の専門で、主に肺がん等の外科治療に携わっておりました。その中で急性の病態だけでなく、少しゆっくりと患者さんと向き合うことが出来る、そういった仕事にも興味があったので、患者さんの顔やご家族、家庭環境などに深く関われるこの分野に挑戦しました。私どもちくさ病院では、個人宅の方700人、施設の方2000人ほどを担当しています。その中で私は個人宅への訪問診療を担当しています。がん末期の患者さんの在宅治療に関しては、個人宅全体で年間60 ~ 70人を担当しています。

和田 
先生は訪問診療をこの地域で積極的にされていますが、がん患者の訪問診療において心血管疾患を併発される患者さんはいらっしゃいますか?

石黒 
がん関連の血栓症を発症した患者さんは症例としては少ないですが、印象に残っています。昨年、私どもで担当させていただいた方の中で、東部医療センター(以下、東部)からの紹介でがん関連の血栓症を発症した方がいらっしゃいました。東部からは、治療経過の共有や薬剤等訪問診療で対応できる状態で私達に紹介いただきました。訪問診療に向けて工夫をしていただいて非常に感謝しております。

和田
主科との連携が出来ているのは良いですね。頻度的には多くはないにしてもやはり血栓・塞栓や、元々心血管疾患をお持ちの方ががんに罹患されるといった状況で我々循環器内科医がお手伝いできることはなんでしょうか。

石黒 
やはり訪問診療で行える医療というのは限られてくるところはあるので、ある程度病院に在院している間に薬剤の投与量・投与方法をしっかり調整してご教示いただけるとありがたいです。実際先ほどの例でもそこはしっかり行っていただき、退院した後、訪問診療においても特にトラブルなく治療出来ました。

和田 
基本的には緩和医療とはいえ心血管疾患を合併しておられるがん患者さんになると、やはり急変するということもあると思います。訪問診療で見られている中でも急変して当院などの連携病院に救急要請するという症例はいらっしゃるのでしょうか?

石黒副院長


石黒 
緊急を要する状態になることはあります。例えば転倒による骨折や感染症、それから循環器疾患です。訪問診療から急性期病院に救急要請をしたり、直接依頼したりすることはよくあります。東部は特にちくさ病院と近隣なので、いつも迅速に対応していただき感謝しております。
和田
こちらこそありがとうございます。ちくさ病院にも入院施設があるそうですが、担当している訪問診療の患者さんでちくさ病院に入院される方、我々東部など他の医療機関に搬送する方といった振り分けはどのようにされていますか?

石黒
ちくさ病院自体は病床が53床あり、訪問診療の中でバックベッド(在宅医療・介護連携を進めるうえで、病状変化時などに入院できる病床)として治療することもあるのですがやはりできる治療が限られているので、病態によっては急性期病院にお願いしています。

和田
訪問時に状態が不安定になったり、あるいは急変された患者さんをその場で判断したりしなければならないというのは大変ですね。

石黒
そうですね。訪問診療自体の治療の内容はそれぞれの主治医が臨機応変に対応しています。反対に、中には退院後ご自宅で過ごすことに不安を抱えていらっしゃる患者さんもお見えで、退院後も病院にかかりたいという方もみえます。そのような場合は退院後に再度東部などの病院にお世話になることも時々あります。

和田
そのような場合にも連携しながら患者さんのケアをしていく必要がありますね。これからがん患者の増加に伴って、そのような患者さんへの精神的なアプローチの方法を一緒に考えなければならないと感じます。先生が呼吸器外科で活躍されていた時と比べ、緩和ケアの対応に何か変わった点がありますか?

石黒
自分が思っていた以上に終末期を家で過ごしたいという要望のある患者さんがいますね。また、訪問看護師やケアマネージャーなど様々な職種が連携することにより、負担を軽減しながらお家で過ごせる時間を作る機会が増えていると思います。いろいろな職種の方が意識高く勉強しており非常に良いと思っています。

和田
以前は先生のようにがん治療の第一線で活躍していた医師が、緩和医療に興味を持って緩和ケアや訪問診療へ移行されるという方が多かったと思います。最近は第一線を経験せず訪問診療というものに取り組む若い医師が増えているとのことですが、現場の先生から見ていかがでしょうか?

石黒
そうですね。当院でも20代から30代前半のドクターが3名ほど常勤医として所属しており、卒後3~5年ぐらいで訪問診療に従事しています。他の病院の話を聞いても若手医師が多く訪問診療に関わり始めていると聞いています。

和田
普段こういった訪問診療のお話を聞く機会がないのでとても新鮮です。我々医師をはじめとする医療関係者が緩和医療、訪問医療等の情報を交流できる場はあるのでしょうか?

石黒
ちくさ病院の中では、カンファレンスや症例相談を週に1回以上行っており、常勤全員が参加しています。様々な科や職種が関わるので、複数の視点から意見を聞くことができ、若い医師にとっても良い環境です。また、学会や企業の勉強会などの情報を院内で共有しています。

和田
なるほど。当院でも2/21にはがん関連血栓症に対する抗凝固療法について講演しましたが、病院や診療科の枠を超えた地域全体でそういった勉強会やカンファレンスを出来ると更に良いですね。

和田診療科部長

石黒
そうですね。実際東部から、ご紹介いただく際、全身状態が良くない方、あるいは特殊な医療処置を要する方などは退院前カンファレンスという形で私達が東部に伺って、それぞれの病院の主治医、訪問看護師、東部の地域医療連携の担当者の方を交えて必要な情報を交換し転院に向けて連携するということは行っています。

和田
充実したカンファレンスが出来ているようで安心しました。話は変わりますが循環器内科の領域で、最近ポータブルエコーが導入されつつありますが、実際訪問診療での使用、広がりはありますか?

石黒
ちくさ病院でも訪問診療でポータブルタイプのエコーは取り入れており、しばしば使用しています。今一番多いのは悪性疾患に伴う胸水・腹水を抜くための使用です。左室の動きや弁膜症の評価に使用している先生もいます。

和田
最近ではPoint of care心エコーという循環器が専門でない医師がプロトコールに沿って行う簡易の心エコー図検査が広まりつつあります。私も心血管エコーを専門にしてきたこともあり様々な機会で紹介しているのですが、救急で対応している若い先生や、なかなか心エコ―を取り入れられない地域の病院に、病態の把握や判断を助けるためのものとして紹介しています。

石黒
そうですね。私もPoint of care心エコーについて初めて聞きましたが、興味があります。東部はそういった研修や若い先生への指導など、教育の機会はどのように設けていらっしゃいますか?

和田
院内ではまだそのような機会を設けられていませんが、Webセミナーなどの心血管エコーの講習会を提供する一般社団法人を運営しています。院内に限らず地域の先生方のお役に立てるのであれば、勉強会のような時間を設けてみていいかもしれません。

石黒
エコーは患者さんにとっては低侵襲かつリアルタイムで評価できる非常に有用なデバイスですので、医師も興味を持つと思います。ただ心エコーというのが非常に難易度の高い範囲でもあるため、ぜひ実践形式で開催していただきたいですね。

和田
エコーも軽量化しているので、訪問診療の先生方にとっては非常に良いパワーツールなると思います。(案)勉強会も地域連携の一環として、開催できるようにしていきたいです。先生は今後、がんの訪問診療、地域医療において目指していきたいことはありますか?

石黒
訪問診療では、がんの緩和ケアに一番注力しているので、ご紹介いただいた患者さんも含め、すべての患者さんと家族が少しでも家で過ごしてよかったと思っていただけるよう、それぞれの地域で多職種との連携をさらに深めて全力で対応させていただきます。

和田
当院もさらにがんに注力していく方針なので、先生方にお世話になる機会も増えると考えます。地域全体でがん診療を支えていくために、それぞれの立場でディスカッションや意見交換をしていきたいですね。
本日はありがとうございました。
◆次号では、連携医の愛ふくろうクリニック 大曽根院長をお招きし、眼科 野崎教授との対談を予定しています。

協力いただいた連携医の紹介

医療法人 豊隆会 ちくさ病院

名古屋市千種区今池南4番1号

TEL  052-741-5331(代表)
院長 服部 智司

『がん相談支援センター』開設

2024年4月より「がん相談支援センター」を開設いたしました。
当院の「がん相談支援センター」では患者さんだけではなく、ご家族や地域の皆さんのご相談もお受けいたします。病気や治療のご相談だけではなく、外部から専門の方を招いた仕事との両立のご相談や実際に治療を経験された方からのピアサポートも行います。匿名で相談可能で、もちろん秘密は厳守いたします。少しだけ話を聞いてほしい、というようなどんな些細なことでも、患者さんの心に寄り添いサポートいたします。

平日10:00~16:00(祝日・年末年始除く)
相談料無料

ヘルシーレシピ~栄養管理科~

当院の管理栄養士が、栄養やカロリーを考慮したヘルシーで美味しいレシピをご紹介!ご家庭にある材料で簡単に作ることができるレシピです。是非お試しください♪

和風フラン(豆腐と白はんぺんの蒸し物)

★栄養量(1人前)

カロリー       140kcal

たんぱく質      10.4g   

脂質         3.8g

炭水化物       14.5g  

塩分         1.0g
材料(40個分)
絹ごし豆腐 150g
白身魚すり身
100g
(または白はんぺん)
1/2個
片栗粉 小さじ1と1/2
0.5g(一つまみ)
人参 適宜
さやえんどう 適宜
(銀あん)
だし汁 100ml
大さじ1/2
薄口しょうゆ 小さじ1/2
みりん 大さじ1/2
少々
水溶き片栗粉 適宜
作り方
①白はんぺんと豆腐をつぶしてボールに入れる。
②①に残りの材料を入れてよく混ぜる。
➂蒸し椀に入れて蒸す。
(または耐熱容器に入れて600wで3分30秒程度電子レンジにかける)
➃蒸し椀または適当は大きさに切って盛り付けたものに、茹でた人参・さやえんどうを飾る。
⑤銀あんの片栗粉以外の調味料を合わせて火にかける。
⑥水とき片栗粉でとろみをつけて④にかける。
♪ ポイント ♪
フランとは洋風茶碗蒸しのことです。銀あんとの相性ばっちりです。
口内炎やのどの痛みがあって、食事が食べにくい時にも、あっさりとして
食べやすいお料理です。
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