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陽子線治療について

前立腺がん



前立腺がんについて

前立腺がんは、TNM分類に基づく臨床病期、グリソンスコアによる組織悪性度、PSA値などによるリスク分類により、予後や治療法が異なりますが、比較的緩徐に進行することが多いため、治療をすることで、根治が望める病気です。

前立腺がんの治療について

前立腺がんに対する高線量投与の放射線治療について、欧米における症例集積研究により、早期前立腺がんに対しては根治的放射線治療と根治的前立腺全摘術の局所制御率は同等の成績である、という結論が得られています。スタンフォード大学などの単施設における手術と放射線治療の後ろ向き比較研究においても、両者の治療成績に有意差のないことが示されています。
また、ホルモン療法の併用により、中・高リスク群でも手術と同等以上の成績が証明されています。高線量の放射線を投与可能な外部照射の方法として、陽子線治療やX線IMRTなどがあります。
陽子線治療は、X線IMRTと同様に、患者への侵襲が少なく、局所進行例でも広く適応があります。陽子線治療は、物理的特徴としてブラッグピークを有し、線量のピーク/プラトー比が高いため、線量分布が優れています。したがって、直腸や膀胱など周囲正常組織に対する影響を増やすことなく標的への線量増加を図ることができ、結果的に副作用を抑えながら、より高い効果を得ることが期待できます。
また、比較的均一に前立腺全体に照射が可能であり、X線IMRTと比較すると、周囲正常組織の低から中等度線量域を著明に低減させることが可能です。(下の図は前立腺がんに対する陽子線治療計画の線量分布図です。)陽子線治療とX線IMRTの治療効果は、どれだけ線量をいれて、がんのある範囲にきちんと放射線を照射するか(総線量、カバー率)で決まるため、施設毎にごくわずかの差が生じる可能性もありますが、効果は同程度と考えられます。
一方、直腸出血などの副作用に関しては、国内の多施設共同試験などの成績から、陽子線治療ではX線IMRTより副作用の生じる割合が少ないという報告がされています。

陽子線治療の線量分布

当センターの治療プロトコールについて

当センターでは、2014年(平成26年)10月から新規のプロトコールに基づき、前立腺がんの陽子線治療について1回あたりの線量を上げ、照射回数を20回または21回とし、治療期間が約2か月から約1か月に短縮されました。
また、前立腺がんの治療開始から2019年(令和元年)11月までに1,400例以上の治療実績を積み重ねてきました。金マーカー・放射線治療用合成吸収性材料の留置により、陽子線をがんに正確に照射するとともに直腸出血の発生頻度の低減を図っていることから、1回当たりの線量を上げ、照射回数を12回に減少させた治療を2020年(令和2年)1月から新たに開始します。これにより前立腺がんの治療期間が約1か月(週5回照射)から約3週間(週4回照射)へ短縮されます。(※除外条件に当てはまる方は従来の照射回数となります。)

照射回数・治療期間の経緯

時期 照射回数 治療期間
2013年(平成25年)2月~ 37回 又は 39回 約2カ月
(週5回×8週間)
2014年(平成26年)10月~ 20回 又は 21回 約1カ月
(週5回×4週間)
2020年(令和2年)1月~ 12回 約3週間
週4回×3週間)
対象に関しましては、下図のプロトコールによる陽子線治療以外にも、局所治療が有用と考えられる場合には、ホルモン療法を併用して陽子線治療を施行しています。

前立腺がんに対するスペーサー注入術

当センターでは、前立腺がんに対する陽子線治療の際に、直腸から出血する有害事象の発生頻度を低減させる取り組みとして、2018年5月からスペーサー注入術を開始しました。スペーサー注入術とは、前立腺と直腸との間にハイドロゲルと呼ばれる物質を注入し、直腸前壁を前立腺から離すことにより、直腸に照射される放射線の線量を減少させることを目的とした技術となります。なお、注入したハイドロゲルは、3か月間は安定した形状を保ち、次第に体内へ吸収されていきます。
スペーサー注入術は、米国での当該技術実施症例と未実施症例の比較試験において直腸出血の発生を有意に低下させることが示されており、欧米を中心に普及しています。当センターにおいては、2018年12月までに200名以上の方に当該技術を用いた陽子線治療を行っており、直腸に起こる有害事象の発生の低減に大きく寄与するものと考えています。
また、スペーサー注入術に対する疼痛などが心配な方には、鎮静剤を用いて苦痛を軽減する方法も行っています。

直腸と前立腺との間に12mm程度のスペースを作ることができるため、前立腺には十分な放射線の線量を照射しつつ、直腸には今までより低い線量しか当たらない陽子線治療を行うことができます。
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