肥満症治療センター
センター長からのメッセージ
右:センター長・瀧口修司
左:副センター長・田中智洋
【肥満症患者さんへ】
肥満症は病気です。肥満症とは、体格指数(BMI)=体重(kg)/身長(m)2が25以上で、かつ高血糖、高血圧、脂質異常症をはじめとする合併症を併発した状態です。体重さえ減らすことが出来れば、さまざまな合併症に同時に良い効果が期待できます。しかし、なかなか減らないのも体重。名市大病院肥満症治療センターでは、皆さんの減量努力を最先端の医学とチームワークでサポートします。
肥満症は病気です。肥満症とは、体格指数(BMI)=体重(kg)/身長(m)2が25以上で、かつ高血糖、高血圧、脂質異常症をはじめとする合併症を併発した状態です。体重さえ減らすことが出来れば、さまざまな合併症に同時に良い効果が期待できます。しかし、なかなか減らないのも体重。名市大病院肥満症治療センターでは、皆さんの減量努力を最先端の医学とチームワークでサポートします。
本センターの特色
肥満に関連する専門医師・コメディカルが協力して治療に取り組んでいます。
減量手術だけでなく様々な治療方法で適切な治療を行っていきます。
減量手術だけでなく様々な治療方法で適切な治療を行っていきます。
減量手術
高度肥満の患者さんに対して胃を小さく切除して体重を減らす手術を行っています。
対象はBMIが35以上で高血圧や糖尿病などの合併症がある方です。
食事療法や運動療法、行動療法、薬物療法などの内科治療を併用します。
対象はBMIが35以上で高血圧や糖尿病などの合併症がある方です。
食事療法や運動療法、行動療法、薬物療法などの内科治療を併用します。
手術後平均体重減少
手術後に体重は1年で平均約30㎏減少します。
その後の体重維持には食事・運動療法が必要です。
その後の体重維持には食事・運動療法が必要です。
病院全体での取り組み
外科治療について①
当センターの手術適応基準
・6か月以上の内科的治療によっても、十分な減量効果が得られない ・BMI(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が35以上 ・糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群のいずれかが合併している ・当センターカンファレンスで手術が適切と判断されている |
または
・6か月以上の内科的治療によっても、下記疾患がコントロール困難 ・BMIが32.5~34.9であり・糖尿病でHbA1cが8.4%以上 ・以下のうちどれかを合併している 重症高血圧・重症脂質異常・重症睡眠時無呼吸症候群(詳細は精密検査が必要) ・当センターカンファレンスで手術が適切と判断されている |
当センターでは保険診療で肥満手術を行っており、上記のような手術適応基準を設けています。現時点で手術適応ではない方は内科治療を行います。
一度手術にならなかった方も、経過によって手術を勧める事があるので継続的な治療が重要です。
一度手術にならなかった方も、経過によって手術を勧める事があるので継続的な治療が重要です。
外科治療について②
手術の実際
・当院では保険診療で行う腹腔鏡下スリーブ胃切除術(K656-2)を全身麻酔で行っています。
外科治療について③
手術後の経過と手術の効果
- 手術入院はクリニカルパスで約2週間を予定しています。
- 食事は流動食のまま退院し、通院で食上げをします。
- 術後の合併症として逆流性食道炎が高率で生じます。PPI内服と食事指導で対応します。
- 重篤な合併症として難治性縫合不全や心不全、肺塞栓、脳梗塞、睡眠時無呼吸の悪化による呼吸不全がありますが、発生確率は高くありません。
- 術後通院は初め1~3か月ごとですが、徐々に間隔が伸びます。
- 術後1年後からリバウンドの可能性が高くなるため短期内科入院を行います。
- 5年間通院して問題が無ければ当院での経過観察は終了し、かかりつけ医での治療に戻ります。
- 体重減少が思わしくない場合には入院精査治療して対処します。
当センターでの平均術後体重経過
外科治療について④
減量手術後の食事療法について
食事のスケジュールについて
食事ステージ | 期間 | 内容 |
ステージ1 |
手術翌日の昼食から2週間 |
たんぱく質、ビタミン・ミネラルを強化した流動食 |
ステージ2 |
手術3週目から2週間 |
たんぱく質、ビタミン・ミネラルを強化した流動食+半固形食 |
ステージ3 |
手術1か月から1年間 |
たんぱく質を中心とした軟菜食~通常食、ビタミン・ミネラル補充 |
フォーミュラ食について
減量手術後の栄養バランス(イメージ)
フォーミュラ食は、糖質、脂質を控え、たんぱく質、ビタミン、ミネラル(微量元素など)をバランスよく補うことができ、減量手術後の食事療法に必要です。
必要な栄養素について
管理栄養士による詳細な説明・指導があります。
- たんぱく質をしっかりと摂取することが必要です。
- ビタミン、ミネラルのサプリメントを摂取することが必要です。
- 水分摂取は、食事以外から1日1000mL以上を目標にします。
管理栄養士による詳細な説明・指導があります。
外科治療について⑤
手術後の食事
手術後2週間は流動食(ステージ1)です
1日650kcal
2週間後から食事進行します(ステージ2)
1日800kcal
術後1か月から安定的な食事(ステージ3)になります
1日1000kcal
栄養素不足の可能性があるので
栄養補助食品を併用します。
肥満治療のサポート
・肥満治療中は管理栄養士による栄養指導・食事のアドバイスがあります。 退院後や通院中の食事について管理栄養士に相談してください。 ・ソーシャルワーカーによる治療費や社会的サポートの相談が受けられます。 |
肥満症について①
「肥満」は、体脂肪が過剰に蓄積した状態と定義され、日本では体格指数(Body Mass Index: BMI=体重[kg]/身長[m]2)が25以上と定義されています。しかし「肥満」とは単なる身体現象であり、病気を表すものではありません。
一方「肥満症」とは、医学的観点から減量が必要とされる「疾患」であり、肥満のうち以下のいずれかを満たす場合に診断されます。
肥満症の診断
※ 25 ≦ BMI < 35 を「肥満症」、 35 ≦ BMI を「高度肥満症」といいます。
高度肥満症では、その病態や治療法が肥満症と一部異なってきます。
一方「肥満症」とは、医学的観点から減量が必要とされる「疾患」であり、肥満のうち以下のいずれかを満たす場合に診断されます。
肥満症の診断
- 肥満に起因ないし関連し、減量を要する健康障害を有するもの(表1)
- 健康障害を伴いやすい高リスク肥満(腹部CT検査での内臓脂肪面積 100cm2以上)
※ 25 ≦ BMI < 35 を「肥満症」、 35 ≦ BMI を「高度肥満症」といいます。
高度肥満症では、その病態や治療法が肥満症と一部異なってきます。
肥満症について②
様々な関連科
肥満にともなう様々な疾患があります。当センターではこれらの疾患についても同時に適切な対処を行います。
内分泌・糖尿病内科 | 糖尿病・高血圧・高脂血症は肥満と大きな関係があります。内科的精密検査や内服・食事による治療で対処します。また、肥満手術を行う場合でも術後合併症を減らすために手術前にできる限り治療を行っておくことが重要です。 |
消化器外科 | 減量手術を担当します。手術をするかどうかの相談から実際の手術、手術後のフォローアップも行います。 |
こころの医療センター |
高度肥満がある方は一定の確率で精神疾患が合併していると言われています。 治療が必要な精神疾患が無いかどうかをチェックします。 また、すでに内服薬のある方は肥満症治療のための薬剤調整をすることがあります。 |
睡眠医療センター |
肥満は睡眠時無呼吸を引き起こし、睡眠時無呼吸は麻酔のリスクを高めるためすべての患者さんで睡眠検査を行います。 手術を行う場合は麻酔が覚めるときに無呼吸が起こらないように処置をすることがあります。 |
整形外科 |
肥満は腰や膝の関節に悪影響を及ぼします。歩行時,膝には体重の約3倍負荷がかかります。膝や腰の治療の必要性に関してチェックします。 肥満手術を行った場合、手術後に骨粗しょう症が発症することがあるのでチェックを行います。 |
肥満症について③
肥満症の治療方針
- 治療目標
肥満症患者を対象にした我が国の研究では、1~3%の体重減少により糖代謝(HbA1c)、脂質代謝、肝機能が有意に改善し、3~5%の体重減少ではそれらに加えて血圧や尿酸値も有意に改善することが報告されています。これらの結果から、肥満症の治療目標は「現体重の3%以上の体重減少」とされています。また高度肥満症では、脂肪の量的異常の関与することから「現体重の5~10%以上の体重減少」を治療の目標にします。実際には個々の症例ごとに、合併症や心理的・社会的問題も考慮し、柔軟に減量目標を決定します。
- 治療方針
肥満の主たる原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っていることにあるという原理原則のもと、摂取エネルギーの制限や運動療法が治療の基本となります。またこれらの治療を長期にわたって継続させるためには、患者の高い動機水準とその維持が必要であり、そのために行動療法も重要です。高度肥満症に関しては、これらの治療によっても目標に達しない場合に、薬物療法や外科療法も検討されます(図2)。薬物療法や外科療法を行う場合でも、食事、運動、行動療法は継続して行う必要があります。
図2 肥満症の治療指針
内科治療①
肥満症治療が必要な訳
肥満症では、肥満が原因で複数の健康障害が発症し、これらを放置しておくとドミノ倒しのように一気に進んで、最後は生命を奪う様々な病態をも引き起こします(図1)。そのため、これらの病態の治療には、肥満の改善がもっとも有効であると考えられています。すなわち肥満症を治療する目的は、体重(とくに内臓脂肪)を減少させ、肥満に伴う様々な健康障害を改善・軽減させたり、あるいは将来の発症を予防することにあります。決して体重を標準体重(BMI 22)まで落とすことではありません。
内科治療②
当センターへの受診について
【医療関係者の皆様へ】
肥満症では、糖尿病や高血圧、脂質異常症だけでなく、高尿酸血症、非アルコール性脂肪性肝炎、睡眠時無呼吸症候群、不妊、肥満関連腎臓病、心・脳血管障害、腰痛・膝痛、気管支喘息、心不全など、多彩な健康障害が起こります。医学の進歩により、肥満症は単なる自制心の欠如ではなく、明確な分子病態に基づく疾病であることがはっきりしてきました。健康障害をお持ちの肥満症患者さんがおられましたら、是非ご紹介ください。肥満症の専門的治療を行いつつ、併診や逆紹介などの形で先生方のご診療のスムーズ化に貢献させて頂きます。
肥満症では、糖尿病や高血圧、脂質異常症だけでなく、高尿酸血症、非アルコール性脂肪性肝炎、睡眠時無呼吸症候群、不妊、肥満関連腎臓病、心・脳血管障害、腰痛・膝痛、気管支喘息、心不全など、多彩な健康障害が起こります。医学の進歩により、肥満症は単なる自制心の欠如ではなく、明確な分子病態に基づく疾病であることがはっきりしてきました。健康障害をお持ちの肥満症患者さんがおられましたら、是非ご紹介ください。肥満症の専門的治療を行いつつ、併診や逆紹介などの形で先生方のご診療のスムーズ化に貢献させて頂きます。
スタッフ紹介
(令和2年4月1日現在)
役職 | 氏名 | 所属部署 |
センター長 | 瀧口 修司 | 消化器・一般外科 部長 |
副センター長 |
田中 智洋 | 内分泌・糖尿病内科 部長 |
肥満治療センター委員 |
青谷 大介 | 内分泌・糖尿病内科 |
田中 達也 | 消化器・一般外科 | |
鈴木 伸幸 | 整形外科 | |
奥山 徹 | こころの医療センター | |
佐藤 慎太郎 | 睡眠医療センター | |
川瀬 弘多郎 | 臨床栄養管理室 | |
山村 清佳 | 看護部 | |
清水 真名美 | 看護部 | |
保々 浩明 | 医事課 |